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リテラシーと理解について考える

大前研一氏の農業論 追記

 前の記事では大前氏が引き合いに出されたオーストラリアについて書きましたが、今更語られるまでもなく既に世界では国際的な農地争奪戦はとうに始まっています。
 世界で日本の食生活に都合の良い適地を必要なだけ確保することは既に困難です。
 日本の商社などがとうの昔に海外での農地経営を行っていますがそれほど簡単ではないようです。
 個人の農家が海外進出をしても上手くいく可能性のほうが低いでしょう。
>農地争奪に出遅れる日本 自給率UPだけで大丈夫?2008年12月20日(Sat) WEDGE編集部
 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/395
    
 その上既に国連食糧農業機関(FAO)は発展途上国での農地獲得を「土地収奪」としていて国際的にも問題視されてきています。
>食糧安全保障のための外国農地”収奪” FAOが待望の報告発表へ 農業情報研究所 http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/overseainvest/09052501.htm
    
 日本政府も既にそのことは理解していて日本は国際協調をベースとした"win-win"の関係に基づく「官民連携モデルで海外農業投資を促進」を打ち出しています。上手くいくかは判りませんが理解できる手法です。
>Vol.44 農地争奪と食料安全保障 外務省 わかる!国際情勢     http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol44/index.html
   
 今更「日本の会社や農民が世界の農業最適地へ行き、そこで作ったものを国内に持ってくるという流れを作ることです」等という「思いつき」を公表できるとは驚きです。
 大前氏は「国際派」の経済評論家のはずです、このことを知らずに書いたのなら「不勉強」ですし、知って書いたのならどうしようもないです。
 何の根拠もなく出来もしない「夢物語」を示し、自分達の都合の良い政策を訴えるのならば真面な論者ではありません。

 農業をバカにしているとしか思えません。日本の「ビジネスマン」とやらはこの程度の「カリスマ」の意見を重んじるのでしょうか。
 「ニセ科学」や「自然派」に騙される人が笑われるのならこの程度の「ビジネスマン」も笑われるべきでしょう。
 
 ちなみにこちらは「食糧自給率」を目的ではなく指標でしかないと考える「食糧安全保障」懐疑派です。
 農業問題の政治利用には批判的なつもりです。
     
     
〈追記の追記〉
 普通は根拠もなく「日本の農業は不効率でビジネスが下手だ!」で済ますビジネスマンさまの農業批判でわざわざこんな無理な設定までするのか謎でしたが理由がわかりました。
 大前氏は先日ユニクロの創業社長の柳井正氏との共著「この国を出よ(小学館)」を発売しました。
 柳井氏は何年か前、華々しく日本での「農業ビジネス」に参入した挙句、見事に大失敗されています。
 流石に今の時点で柳井氏にもできなかった農業改革が可能だとは言えませんね。
 タイトルからして海外進出はこの本の本論でしょう。
 とはいえ現実の海外事情に此処まで疎いのならこの本の内容も……。以下自粛。