はてなビックリマーク

リテラシーと理解について考える

福田刃物工業様、日本特殊合金株式会社様、ublftbo様ごめんなさい。

 福田刃物工業様、日本特殊合金株式会社様、ublftbo様ごめんなさい。

 福田刃物工業様の「KISEKI:」という商品について粉末冶金製法であることから「粉末ハイス鋼」の一種だと思ってバカなこと書きました。すみません。

  

 粉末冶金でも鉄の比率が低い場合はマルテンサイト構造で切るのではなく、タングステンの硬度で切る場合があることを知りませんでした。

 日本特殊合金株式会社様もおそらく靭性を高める苦労がおありだったにもかかわらず、単に粉末製法である点のみに気を取られ、間違ったことを書きました。

 ごめんなさい。

 ublftbo様お手間をかけせてしまいました、ごめんなさい。

 一応ブログの議論には意味があると思いたいので許してください。 

 

 間違った批判をしてすみません。皆様への迷惑 謝罪します。 

 

 

失敗のこわさ

 もし、善意と正義感や実体験で言説をし、それが支持を得て運動になり同志から認められ何らかの評価を得たにもかかわらず、それに間違いや結果としてのやりすぎがあったりした場合、取り下げるのは難しいだろうなと思います。

  

 その評価が生活や人生における必要や大切なものになったら修正する方が損であったとき、過ちや行きすぎを認められないのは仕方ないのかもしれません。

 

 褒められたり、評価されることも恐ろしいことなのかもしれないでしょう。

 自分の人生も仲間の人生も簡単に曲がるのかもしれないと思うと言葉とは難しいものです。

読書メモ抜粋その9

はてなブックマーク」に書いている「100字読書メモ」の一部、現在300冊強の簡易紹介です。
 飲食、酒造、歴史、刃物、銃刀、軍事等。
 最新>http://b.hatena.ne.jp/settu-jp/?url=http://www.amazon.co.jp/
  

料理と科学のおいしい出会い: 分子調理が食の常識を変える (DOJIN選書)

料理と科学のおいしい出会い: 分子調理が食の常識を変える (DOJIN選書)

科学の視点から料理を再検討、還元研究の分子調理学と技術の分子調理法。おいしさを感じる身体・知覚メカニズム。おいしさを構成する物性と調理工程の解説、味の再構築、可能性。味の最新科学をわかり易く紹介、好著 2015/01/11

美味しさの脳科学:においが味わいを決めている

美味しさの脳科学:においが味わいを決めている

風味の脳神経科学「ニューロ・ガストロノミー」。口から鼻に上る匂いの役割、嗅覚の生理、受容体や情報処理の感覚機能、脳と五感、記憶と認識、言葉、意識。ヒト独自の味覚認知とは。最新研究。充実してるが難しい 2015/01/18

本当は間違っている心理学の話: 50の俗説の正体を暴く

本当は間違っている心理学の話: 50の俗説の正体を暴く

通俗心理学と心理学神話。脳神話催眠サブリミナル記憶喪失嘘発見器夢病気ロールシャッハプロファイリングカウンセリング犯罪等々間違った心理知識への科学的批判。フィクションの問題も。日本とは異なる側面。要注目 2015/02/01

人とミルクの1万年 (岩波ジュニア新書)

人とミルクの1万年 (岩波ジュニア新書)

民族学から見たミルクと乳製品の食文化史。西アジア,インド,モンゴル,欧州でのフィールドワークから発酵、クリーム分離、凝固剤、加熱濃縮という加工保存技術と利用。乳製品不利用も検討。広い視点から見る。好著 2015/02/08

神戸とお好み焼き 比較都市論とまちづくりの視点から (のじぎく文庫)

神戸とお好み焼き 比較都市論とまちづくりの視点から (のじぎく文庫)

2002年刊。地ソース、「にくてん」クレープ(のせ型)お好み焼き、まぜ型の一般化、地域ガイド、値段の推移。恐らく東京発祥の原型が関西花柳街に持ち込まれ駄菓子的な受容から現代商品へ。地域性、都市論、考現学的か 2015/02/15

技の天ぷら評判の天ぷら (旭屋出版MOOK)

技の天ぷら評判の天ぷら (旭屋出版MOOK)

飲食業向けmook専門書。現代てんぷら事情を老舗・名店ではなく気鋭の店の技術と工夫から。高級店から大衆店、混合業態も。天丼、天定、天茶、肉天、かき揚げ、串天、創作、麺類。油、粉、卵、温度、下処理。面白い 2015/02/22

世界の軍装図鑑 18世紀-2010年

世界の軍装図鑑 18世紀-2010年

近代軍服個人装備の流れを700超の良イラストと解説。国家の威信を示す初期の礼装と兵卒の軍装、両大戦期、特殊機能を持つ現代、異装の非対称戦、警察。兵器解説。兵器戦術政治で変化。20C以降は写真からの書き起こしか 2015/03/01

納豆の起源 (NHKブックス)

納豆の起源 (NHKブックス)

納豆史研究の検討。無塩発酵大豆とは。ラオス、タイ、ミャンマー、インド・ネパールのフィールドワーク。「民族」毎の多様性。加工、形状、味付や植物利用等。照葉樹文化論の検証。多元発生説、発展段階論。基礎研究 2015/03/15

パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)

パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)

カリスマ高級リテールベーカリーのパン論。略史と著者経歴から。デクレ・パン,多加水,長時間低温発酵,発酵種とイースト,品種と産地・製粉,灰分と残留酵素,水,モルトエキス,機器や窯。孤高の技術,刺激的。健康説等要検証 2015/03/22

江戸の弾左衛門支配と異なる大坂の非人=貧人像。転びキリシタンを軸に「乞食」を纏めた垣外(かいと)構造。四天王寺と結ぶ天王寺垣外の偽史的伝承と権益。長吏と階層化。大坂の御用警使・治安警察と非人。実証的論考 2015/03/29

新書740魚で始まる世界史 (平凡社新書)

新書740魚で始まる世界史 (平凡社新書)

欧州保存食流通魚の近世史。オリエントから基督教迄の魚イメージと規範。中世以降の北方ニシンとタラ。ハンザ同盟からオランダ、イングランド、北米へ。領海、自由貿易ヘゲモニー。近代の萌芽を多くの資料から描く 2015/04/05

たこやき

たこやき

1993刊。たこやきの誕生と歴史と現在(出版当時)、周辺。大衆食史を学問的な手法を容れ、文献だけでなくその時代でしか行えない関係者への取材で探る。興味深い「古典」。原型の明石玉子焼と大阪のラジオ焼。文庫化済 2015/04/19

 文庫(古書)https://www.amazon.co.jp/dp/4062638002

埋立地月島100年史ともんじゃ。新興工業地と商業、露天商、地域社会。路地裏の小商いが時代の流れと共に経済的な理由で地域の代名詞に。フィールドワークから。女性の社会進出にも注視。個人史から社会を見る 2015/04/26

「お好み焼きの戦前史」を読んで

 週刊誌やガイドブックでよく知られた料理の「発祥の店」という記事を目にすることがあります。
 「オリジナル」を作るその名店に一度行きたいと思う人も少なくはないでしょう。「町おこし」にも使われます。
        
 「歴史」という学問が有るのはご存知でしょう。
 
 人々の営みの中ではもともと、口伝えによる先祖や地域の昔語りというものがあり、過去に起きたことから何かを学び、自分たちが何者なのかを位置づけます。 
 自分たちがなぜこのようにあるのか、どのような権利があり責任があるのか、どんな成功をしたか過ちを犯したか、誰とどういった繋がりがあるか、等というものです。
    
 最初は神話や伝説、教典などの形でその目的に合う事象が選ばれ、意味づけられ、「なぜそうなったのか」についての推察がされ物語としての「歴史」が生まれます。
 多くの国々や社会で、その国や社会、一族や集団の共通の認識としての「歴史」が共有されます。 
 社会や「世界」の在りかたの説明や、個人や階層・集団の顕彰の役割も持ちます。

 文字が生まれ記録が作られ「国」が生まれそしてギリシャと中国では新たな「歴史」という考え方が形作られます。
 物語としての歴史から、より確からしい根拠に基づく「歴史」への探求を目指すという考えが見いだされ、神話や伝説、教典とは異なる「学問としての歴史」に向かう道筋が示されます。 
   
 「近代」の成立とともに、「学問としての歴史」と「物語としての歴史」の相克が明らかになります。
 実際、ほんの少し前、それこそ20年ほど前までは学問と物語の歴史は混同されてたといえる部分がありました。
   
 社会的動物としての人間は多分に「意味」と「物語」の生き物です。
 事象から「意味」を読み取りそれを「物語」として理解する部分があります。理解した「物語」はヒトの認知の一部となり、世界や自分を解釈しアイデンティティーを形作ります。
  
 現在でもナショナリズムイデオロギーアイデンティティーともかかわる形で歴史は理解され、語られる部分はあります。  
 一方では事実関係による確からしさから歴史を読み解こうとする学問としての歴史であるはずです。
   
 人間というものは思い込みや偏見、価値観や理想といったものを持ち、事柄を理解する時に人間であるという部分から離れて物を見ることはできません。
 「学問としての歴史」は自分が人間であることを認め、なおかつ可能な限り「客観的」に事象を読み解こうとする試みでもあります。
             
 少なくとも日本では政治や社会の歴史に比べ、ヒトの日常の営みである風俗・文化の歴史は美術などの一部を除いては学問的な重要度が小さいとされているように思えます。 
 特に近代の風俗史は、研究の少ない分野なのかもしれません。 
 どの時代でも「今現在生きている」人にとっては当たり前でしかないことが記録されず、のちには当たり前でなくなり、人がいなくなり記憶が失われ、実際に何が起きたかがわからなくなることがあります。
 
 日本では明治時代に民俗学が生まれ、農村の「常民」の記録が残されるようになり、のちには考現学と呼ばれる試みも有りました。
 しかし一方では、ほんの少し前の出来事が記録されず残らなかったり、間違った伝承が共有されることも有ります。
     
 「お好み焼きの戦前史」は忘れられた「お好み焼き」の正体を「近代食文化研究会」(個人研究者)による「5年以上の時間をかけて収集した250以上の資料によって初めて明らかに」した論考です。
 https://www.amazon.co.jp/dp/B0794GC6TX/*1
    
 まず今では覚えている人もいない100年前の盛り場の景色、時代の風俗が語られます。
 そして「お好み焼き」が現れます。
     
 著者はそこから歴史をさかのぼり、江戸の駄菓子の歴史から、明治の露店屋台、開国から西洋食文化の移入と日本での変容と受容、産業社会構造の変化、驚くべきウスターソースの実像、「消えた」お好み焼き、ラーメンブームの原像、全国への伝播、そして「お好み焼き」とは何だったのかを描きだします。
    
 現在までの「お好み焼きの歴史」等の大衆食の歴史とされるものの多くが、過去に一部の人が短期間調べただけの少数の記録や利害のある関係者からの証言、憶測でつくり出された事実とは異なる「物語」であると明らかにします。
 著者は料理書だけではなく、当時の新聞、観光情報案内、広告、調査資料、随筆等を渉猟し、先行研究を検証し、失われた歴史を再現します。
  
 江戸明治大正の都市の風俗、子供たちのくらし、時代の意識、人々の生業、そこから思いがけない「お好み焼き」の歴史が現れました。
 食文化に興味のある人や大衆食を愛する人には驚きの事実が示されます。
 「ほんの百年前」には多くの人が知っていた、わざわざ書き残すことでもないはずの日常が記憶から消え去り、50年前までは聞けば分かった話を調べだすという事の難しさと面白さに驚くでしょう。
   
 一つの記録を確認するために複数の情報源から事実関係を確定し、より確からしい実像に迫る知的誠実さには目を見張ります。
 一方では甘い調査から「物語」を生み出した先行書については厳しく検討します。安易に伝承や古い経験談といったオーラルヒストリーに頼ることはありません。
 記憶違いや宣伝効果、記述者の物語の仮託によってつくられた「偽史」を排し、「歴史」を描こうとします。
     
 「生き残った老舗」や名前の知られた「伝説の店・料理人」は物語の主役になりえます。
 記述者や客や「老舗」自体、時には自治体などもその物語に乗り、利用します。すでに「物語」が産業や地域振興の名のもとに「偽史」として定着していることも有ります。
 「発祥の店」「発祥の地」というものにはそういったものも少なくはありません(後継ぎが先代などからホラを吹かれただけなのかもしれませんが……)。
    
 豊富な史料から時代の霧を晴らし、かすかな手がかりを多く積み重ね、事実に迫ります。
 巻末の膨大な資料集はそれだけでも価値があるでしょう。
 この本で示されるように近代にはあまりにも多くの資料が有ります。それを調べ上げ、整理するのは大変手間がかかります。
 しかし近年では情報機器の進歩で比較的には調査が容易になったともいえるかもしれません。
   
 しかし今現在でも凡百の書き手による食の蘊蓄本は良くて数冊の先行研究、場合によっては種本一冊からの孫引きだけで書かれているものも多いのが実情です。
 最低限の基礎知識すらないままに経験談と小耳に挟んだだけの関係者の話だけでも本になります。何の裏取りもなく種本が推測としているものを事実のように書くものもあります。
 重要な基本文献に全く触れずに書かれた本も有りました。学者でも畑違いのジャンルに思い込みの間違った記述が入ることも少なくないです。        
 食に限らず、何らかの事実に触れる場合は自分の知識を顧みることも必要です。

 「食」については誰でも毎日ふれるもののため、容易に「わかった」つもりになりやすいものです。
 「大家(たいか)」とされる作者が安易な誤認を書き、誰も指摘すらしないことも目にしました。カリスマになると批判すら許されないのでしょうか。
 何十年も前の情報が現在でも検証されずに定説とされることも少なくありません。

 専門家ではない「文化人」などが調べもせずに書き、同じく知識も興味もない別のジャンルの評論家が好意的なレビューを書くことも少なくありません。
 食の歴史を学ぶ同士で「ライバル」でもある自分としても「お好み焼きの戦前史」は価格以上の価値のある著作であると断言できます。
    
 このブログでは過去に
「新・とんかつの誕生 http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20150922/1442901832
「戦前のお好み焼き http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20160314/1457940308
 で同じテーマに取り組んでいますが「お好み焼きの戦前史」はそこでたどり着けなかった答えを明らかにする快著です。これからの食文化史、風俗史の新たな基準となる素晴らしい研究です。
     
 読み物としても面白いのでお勧めです。
 ご興味のある方は、「お好み焼きの戦前史」を読み、その先に向かって行くことも出来るでしょう。ここから先にまだ調べることはたくさんあります。
 「国立国会図書館」「味の素食の文化ライブラリー」「女子栄養大学・短期大学図書館」等に資料が多くあります。地域でも少し大きい図書館だと食文化の本や古い随筆も有ります。朝日新聞、読売新聞などでは古い記事もネットで検索できます(これも図書館で可能な場合も有る)。
    
 例えば昭和50年代に突然登場し53年ごろには定着した「肉じゃが」の名称と概念、それが代表的な「おふくろの味」であることが一般化したことについては今調べていますがわかりません。(海軍説はウソ)
 テレビドラマや映画又は料理番組やバラエティー番組等の影響かもしれません。ご存知の方がおられれば出来れば根拠を示して教えてください。
    
 近代食文化・風俗史は趣味としても面白いジャンルなので多くの方の参入を期待します。サブカルチャーの歴史もまだ調べることは多くあります。
 「お好み焼きの戦前史」はその道標になるでしょう。
    
 類書の風俗史としては
 創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史 (光文社新書) 輪島裕介
 https://www.amazon.co.jp/dp/4334035906
  
 食文化史本は当ブログ「読メ」の「読書メモ抜粋」からどうぞ。
   
 近現代の「偽史」には
 江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統 (星海社新書) 原田実
 https://www.amazon.co.jp/dp/4061385550
   
 近代日本の偽史言説―歴史語りのインテレクチュアル・ヒストリー 小澤実
 https://www.amazon.co.jp/dp/4585221921 
  
【関連記事】
 日本肉食史覚書
 http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20120614/1339605334 
     
 関西に納豆食は無かったのか?
 http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20170109/1483951797
 
 一汁三菜の正体
 http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20170310/1489122073   

*1:電子本kindleです。登録をすればコンビニなどで買えるギフト券で支払いが出来ます

読書メモ抜粋その8

はてなブックマーク」に書いている「100字読書メモ」の一部、現在300冊強の簡易紹介です。
 飲食、酒造、歴史、刃物、銃刀、軍事等。
 最新>http://b.hatena.ne.jp/settu-jp/?url=http://www.amazon.co.jp/

銃と戦闘の歴史図鑑: 1914→現在

銃と戦闘の歴史図鑑: 1914→現在

WW1以降戦争での銃器。各作戦・戦闘の経過と戦術・編制、各国各勢力の銃の紹介。近現代戦の発展用法について日本では知られない銃も紹介。最新の非対称戦。豊富で詳細な話題、図版。好著。ぎこちない訳、一部誤記も 2014/08/31

食の500年史

食の500年史

欧州初期近代(近世)「世界」が繋がって以降「コロンブスの交換」等のグローバル化された交流の中で変動する食。農耕牧畜、階級、社会的性差と自認、供給、現代食糧事情等話題毎。英仏日近代料理史も。読み応え有り 2014/09/07

世界の食文化〈16〉フランス

世界の食文化〈16〉フランス

豊富な資料・先行研究に基づく仏国食論。近代以降の食文化史、宮廷貴族に始まる消費文化「フランス料理」、規範・形式、現代社会の食=栄養・安心、階層、国際化等。社会学的な食文化論も含めシリーズ屈指の読み応え 2014/09/14

図説朝食の歴史

図説朝食の歴史

一日の初めの食Breakfast、ヒトの生活習慣としての朝食を豊富なエピソードで。古代ギリシャから英国への西洋朝食の文芸や史料等。図版多数。世界各地の朝食も簡易紹介。随筆的で多少散漫な印象、内容は邦題と異なる 2014/09/21

江戸の朱子学 (筑摩選書)

江戸の朱子学 (筑摩選書)

中国思想研究者による新儒学の日本思想史。中世禅僧らに紹介された朱子学が江戸後期まで政治に容れられず「学問」とされ深化。教条化せずに思索の基盤になり多様な思想概念の母体に。思想解説・研究史等内容は高度 2014/09/28

包丁と砥石大全: 包丁と砥石の種類、研ぎの実践を網羅した決定版!

包丁と砥石大全: 包丁と砥石の種類、研ぎの実践を網羅した決定版!

包丁類の紹介が半分(良質)、残りは砥石と研ぎについて。特に天然砥石の記述は詳細、人工砥石では再現できない機能。研ぐ技術について科学的な視点、手わざ。切れ味に拘り特異な発展をした日本文化「研ぎ」。専門的 2014/10/12

飛び道具の人類史―火を投げるサルが宇宙を飛ぶまで

飛び道具の人類史―火を投げるサルが宇宙を飛ぶまで

知能と並ぶヒトの特性、投擲投射能力。身体構造、情報処理。他の生物を凌駕する恐るべき技能が生態系を変え世界の支配に繋がる。投石から弓矢、火薬銃砲、ロケット。好著。豊富な史料から描く、一部疑問文献も 2014/11/02

日本人は、どんな肉を喰ってきたのか?

日本人は、どんな肉を喰ってきたのか?

現代日本狩猟者の肉食文化。西表と宮崎椎葉の猪、大分宇目の鹿、高知穴内のハクビシン、大分長湯の穴熊礼文のトド。現地同行取材と解体調理実食、写真。猪鹿では危険な生食が残る。面白いが食肉論としてはナイーブ 2014/11/23

漢字の誕生から発展と伝播、日本での受容と仮名の発明、日本化への歴史を朝鮮・越南や中国内での変化も含め広い視点から描く。国字や異体字、読み、字書研究史、比較言語。「正しさ」では無く生きた文字を探る。好著 2014/11/30

栄養学の歴史 (KS医学・薬学専門書)

栄養学の歴史 (KS医学・薬学専門書)

栄養科学の歩みを成功例以外の試行錯誤・間違いの歴史を含めて。栄養素と欠乏、微量栄養素、食品摂取・産業、添加物と混ぜ物、フードファディズム、偽医学、健康食、現代。充実した内容だが直訳調の悪文が読み辛い 2014/12/07

火の賜物―ヒトは料理で進化した

火の賜物―ヒトは料理で進化した

料理が人を進化させたとする仮説。猿人から原人、新人に至る歴史を肉食澱粉食や火と加熱、破砕切断など調理加工から。身体構造、消化吸収や社会、性差といったヒトの生態を食から解く。生食考。多彩な資料。刺激的 2014/12/14

拳銃総論。歴史、網羅的なメカニズム解説、生産、刻印の読み解き、世界のハンドガン1600種(バリエーション含む、簡略)とメーカー。特にマイナー銃について積極的に紹介。良質な写真図版多数。初心者向きではない 2014/12/28

最近読んだファンタジー幻想小説から(2017)

 今年は食べ物記事ばかりなので何か書こうかと考えましたが、ネタも無いのでこの辺で。
      
 まず欧米物から。 
 最新作ではありませんが、英語圏では評価の高いものを。
        
 『チャリオンの影 (創元推理文庫) ロイス・マクマスター・ビジョルド

チャリオンの影 上 (創元推理文庫)

チャリオンの影 上 (創元推理文庫)

 『影の棲む城 (創元推理文庫) ロイス・マクマスター・ビジョルド
影の棲む城〈上〉 (創元推理文庫)

影の棲む城〈上〉 (創元推理文庫)

 この2作はいずれも上下巻ものです。
 「ヴォルコシガン・サガ」(シリーズ)でSF作家としても知られるビジョルド異世界ファンタジー
 レコンキスタ期のイベリア半島をモデルにした宮廷魔法ファンタジー
 いずれも「大人」の主人公の苦悩と闘いを描いた作品です。
 「呪い」や「神々」が存在する世界で運命と対峙し、懸命に生きる人々が描かれます。
 人間ドラマと魔法の設定がうまく組み合わされた優れた作品です。「五神教」の設定が良くできています。
 「影の棲む城」はヒューゴー、ネビュラ、ローカスの三賞を受賞しました。ゲーム的ファンタジーと一線を画した「大人の小説」として書かれているのも特徴です。
    
 続いては『エルフ皇帝の後継者(創元推理文庫) キャサリン・アディスン』
エルフ皇帝の後継者〈上〉 (創元推理文庫)

エルフ皇帝の後継者〈上〉 (創元推理文庫)

 思いがけず帝位を継ぐ事になった「混血」の第四皇子。
 「スチームパンク」的な世界の亜人の帝国の宮廷陰謀劇。
 少年皇帝の成長を描きます。
 それほどドラマチックでもなく活劇なども無く、比較的淡々と話がすすみますが読み心地がよい作品です。
 こちらも上下巻もの、ローカス賞受賞。
       
 『ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル スザンナ クラーク』
ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレルI

ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレルI

 上の2作はアメリカの作品で異世界ものですがこれはイギリスの歴史ファンタジー
 19世紀のイギリスで「英国魔術」を復興させようとする二人の男、呪われた人々と奇妙な魔物。
 英国風ユーモアと奇想、奇人。後代に書かれた歴史ものとしての記述の仕掛け、ちりばめられた謎が独得の作品世界を作り出します。
 イギリス現代ファンタジーの傑作。世界幻想文学大賞ヒューゴー賞ローカス賞受賞。
 日本人の読者は好みがわかれるかもしれません。全三巻。

 大雑把な印象としては、英語圏のファンタジー幻想小説でもアメリカの物は比較的「論理的」で作品内でのルールがはっきりしていて、起承転結がわかりやすく、いわゆる「エンタメ」色が強く、イギリス系の物は他の作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズニール・ゲイマンなどをみても「魔法」を得体のしれないものとして書き、多くのなぞが残る終わり方をする作品が多いような気がします。
 アメリカの「ベルガリアード物語」やその続編「マロリオン物語」だと日本のライトノベルに近いと感じます。
 いくらか一般化しすぎの感想ですが、ヒロイックファンタジーやヒーローもののアメリカンコミックのアメリカと神話伝説や奇譚のイギリスといった分類も出来るかもしれません。
     
 日本の作品もいくつか。こちらは新作中心。
 
 第二回創元ファンタジイ新人賞受賞作『宝石鳥 鴇澤 亜妃子』

宝石鳥

宝石鳥

 妻を喪った音楽家、婚約者を探す女性、百年前の画家の見た不思議、仮面の女と島の儀式・祭礼。 
 様々な運命の糸が一つに繋がり壮大な神秘を織り上げる。
 音楽、舞踊、絵画、神話、死と再生。
 ジャワ島辺りをイメージした伝説の島を主な舞台に絢爛たる描写で幻想的な物語を描きます。
 少しこなれていない印象もありますが、新たな地平を開くかもしれない骨太な作品です。
 
 こちらは大ベテラン「幻想小説の女王」『U 皆川博子
U

U

 タイトルは「うー」と読みます。 
 17世紀のオスマン帝国第一次世界大戦期のドイツ帝国
 奴隷兵イェニチェリをつくり出す強制改宗デウシルメ、商船を狙い通商破壊を行う潜水艦Uボート
 二つの時代を繋げる謎の男たち。 
 歴史の闇を描きだす華麗な筆致。愛憎、暴力、美しい絶望。
 いまだ衰えを知らない「文化功労者」の書く圧倒的な物語。いつもの「皆川文学」は健在です。
    
 「ライトノベル」からも一作。
 最近に「読んだ」わけではなく、数年前から読んでいて「小説家になろう」で今年完結した『本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません 香月美夜 いわゆる「テンプレート」ものの「異世界転生」「チート(反則的な知識や能力を持つ)」作品ですが、細かな設定とバランスの良さ、きちんとした文章、魅力的なキャラクターで読ませます。 
 大長編で書籍ではまだしばらく完結はしませんが、女性や大人の男性でも読め、児童にも勧められるしっかりとした作品です。
 「このライトノベルがすごい!2018」単行本・ノベルス部門第一位。
 全20巻位まで行きそうです。
 
【関連記事】
今どきの日本ハイファンタジー小説 http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20141015/1413298829
    
現代日本ファンタジー幻想小説概観(大人向け)http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20161115/1479217294