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リテラシーと理解について考える

好きな海外旧作テレビドラマシリーズ(動画有注意)

 おっさんなので時には昔話をする資格ぐらいは有るはずです。 
 欧米のテレビドラマに好きな作品も少なくはないのですが、あまり相手にしてくれる人もいないので書いちゃいましょう。広いネット世界だと興味のある人もいるかもしれません。
 特に映像作品に造詣とかがあるわけでもないので批評とかではなく雑談です。
      
 いちおうベスト5という事でまず5位から……といいながら最初から同点5位2作です。
    
 最初は名作「刑事コジャック」原題は「KOJAK」だとか。
 アメリカで1973年から1978年、日本では1975年から1979年まで放送され、何度も再放送もされた中年以上の人には有名な作品です。
 スキンヘッドで(実際は彫りの深い美男ながら)人相が悪く悪役も多い個性派俳優テリー・サバラス(Telly Savalas)がベトナム戦争後期からの重苦しい雰囲気の当時アメリカの犯罪都市として知られたニューヨーク市警の「デカ長」NYPD第13分署刑事課主任テオ・コジャック警部補を演じます。サバラスはこの作品で権威あるエミー賞を受賞しました。
 いわゆるリアル系刑事ドラマの初期の傑作です。日本のエンターテイメントにも多く影響を与えました。
     
 異相ながらユーモアを好む大変なダンディ、清濁併せ呑むタフなやり手ながら正義感が強く人情家、アメリカの刑事ドラマにもかかわらずそれ程ガンアクションは有りません。
 「長さん」コジャックは稀にスナップノーズの短銃身小型リボルバーを抜くことが有りますが基本的にはマフィアやギャングであろうと知恵と「正義」で立ち向かいます。あまりに強すぎて銃など要らないとさえいわれる現場指揮官、そしてタフネゴシエーターです。
 ギリシャ系のサバラスの個性を生かし移民社会の縮図も描きます。日本語吹き替え版では森山周一郎の名演も光ります。
        
 同じく5位でこれは知る人ぞ知る(日本では受けなかった)「たどりつけばアラスカ」又は「ノーザン・エクスポージャー アラスカ物語」、原題は「NorthernExposure」。
 アメリカでは1990年から1995年にかけて第6シリーズまで作られましたが日本では第4シリーズまでしか放映され無かったとの事。アメリカではエミー賞ゴールデングローブ賞、ピーボディ賞といった錚々たる受賞歴を持つ作品です。
    
 ユダヤ系のニューヨークの医師の青年が奨学金の代償としてアラスカ辺境の架空の田舎町「シシリー」で「お礼奉公」を余儀なくされ、嫌々赴任してきます。
 エリート意識が強い「うらなり」都会人の彼がそこで地域唯一の医師として町の変人奇人の騒動に巻き込まれながらも(嫌々ながらも)徐々に馴染んでいく基本的にはコメディ作品です。
 日本ではありえる単なる「純粋な自然、素朴な人々に心洗われここで生きる事を誓う都会人」の話でも「頑迷な田舎の人々の心を青年医師が解きほぐしていく」というタイプの作品ではなく、俗物も多く癖のある人々のドタバタ劇をアメリカほら話「トール・テイルズ」技法も取り込みながら、「自由と多様性の国アメリカ」の物語として「最後のフロンティア」アラスカを舞台に描きます。
 「ステレオタイプ」を微妙に崩していく飄々としたユーモアに何とも言えないおかしみと余韻が有ります。
 
 第4位は「ふたりは最高! ダーマ&グレッグ」「Dharma&Greg」。
 アメリカで1997年から2002年まで、日本では1999年から2002年まで放送されました、これはそこそこご存知の方も多い作品でしょう。
 ヒッピーの両親を持ち自らも神秘思想を持つヨガ教師の自由人ダーマと保守的な上流階級の息子で検事補という固い仕事につく生真面目なグレッグが出会ったその日に恋におち、その日のうちに結婚することから始まるシチュエーションコメディです。
   
 双方の家族や友人たちを巻き込み価値観やライフスタイルの違い、個性的なキャラクターによる騒動などを明るく笑いにします。 
 資産家と庶民、体制派と反体制、保守派とリベラル、人種属性、個性といった異なる人々の特性やすれ違いを出来る限り全方面に公平に「ネタ」として笑い飛ばします。
 幾らか辛辣な社会風刺の側面もありますが、それを明るいダーマと誠実なグレッグの愛情でまとめ上げ、「良きアメリカ」を示した作品だと感じました。
 残念ながら同時多発テロの影響でコメディが受けなくなったというのが終了の理由だともいわれています。 
   
 第3位は「スタートレック:ディープ・スペース・ナイン」「StaTrek:DeepSpaceNine(DS9)」
 アメリカで1993年から1999年、日本では1996年から2002年まで放送されたとのことです。
 SF特撮ドラマ「宇宙大作戦」から続く「スタートレック」シリーズの異色作で他の作品が宇宙戦艦を舞台にした冒険譚なのに対し、この作品は「惑星連邦」の軍事基地「DeepSpaceNine(DS9)」を舞台に多くの宇宙種族による政治的軍事的な関係を描く群像劇の側面を持つポリティカルフィクションです。
      
 「スタートレック」シリーズは人類が宇宙に進出し多くの異星人との接触や戦争を経て一大勢力として多種族社会を形成した未来社会で、基本的に「宇宙艦隊」の現場指揮官、艦長や司令官を主人公とした作品です。
 この作品は戦争の結果独立を果たした小国近辺の基地を任された宇宙艦隊軍人らの活躍と壮大な歴史の一部を多くの登場人物の物語と重ね合わせ、重層的に描き出します。個性的なキャラクターと「人間」模様、複雑な事件、政治外交、謎の敵、宇宙大戦、見応えのある作品でした。
 90年代中盤から後半にかけての「冷戦後」の時代を反映した作品ともいえるかもしれません。
 
 個人的には最後の方の少しニューエイジ的な部分にひっかかるところもありましたがシリーズでも特に好きな作品です。
 テレビドラマとは思えない高品質な特撮・特殊メイクとコンピューターグラフィックスも見どころです。
    
 第2位は無く1位が2作。
   
 第1位ひとつ目は「特捜班CI-5」原題は「TheProfesssionals」。
 イギリスで1978年から1983年に掛けて放送され、日本では80年代に地域ごとにばらばらに放送された作品です。80年代半ばに見たような記憶が有ります。
 冷戦下のイギリスの架空の内務省非公然防犯対テロ特捜機関「CriminalIntelligence5(クリミナル・インテリジェンス・ファイブ)」の秘密捜査官のドイルとボーディ、ボスのコーレイ部長らを描くアクション作品です。
 組織犯罪、凶悪犯罪だけでなく当時の東側機関にたいする防諜やそのころも世界を騒がせていた国際テロにも立ち向かいます。

 事実上はボスのコーレイ部長の個人機関であるCI-5は特殊技能を持つ様々な「凄腕」メンバーが集められ荒事・暴力も厭わずダーティーな手段も用い事件を解決します。メンバーの殉職も珍しくは有りません。
 情報機関出身で政治家にも顔の利くコーレイ部長は「社会の敵」には容赦をしません。当時のイギリスでも暴力描写が問題視される部分も有ったようです。
   
 切れ味の良いアクション、「リアル」な銃の使用、緊張感のあるシーンが当時としても突出した完成度で、この後ほかの多くの作品のガンアクションを見ても物足りなくなるほどです。
 シナリオの完成度の高さも見どころです。複雑で凝ったストーリー、個性的なキャラクター、気のきいたセリフ、クールな演出、ウイットとユーモア、スピード感。
 警官上がりで少し熱血・ナイーブなドイル、傭兵出身で裏の世界に居た非情なボーディの主役コンビ、口うるさいが面倒見の良いコーレイ部長とその他のメンバーも魅力的です。
     
 個人的にはポリス&スパイのアクションドラマとしては最高の作品だと思います。イギリスでは最高視聴率70%だったとか。
 士郎正宗の「攻殻機動隊」がこの作品からインスパイアされて作られたというのは良く知られた話です。「公安9課」はCI-5で「荒巻大輔課長」はコーレイ部長そのものです。
 新007シリーズのマーティン・キャンベル監督を輩出したことでも知られます。  
 
 ふたつ目の第1位は「女刑事キャグニー&レイシー」「Cagney&Lacey 」。
 アメリカでは1982年から1988年まで放送された作品です。日本では1980年代末に放送された覚えがあります。
 邦題は際物っぽいタイトルですが作品部門で2度のエミー賞と特に同賞ドラマシリーズ最優秀主演女優賞は1983年から1988年に掛け6年連続で主演の2人(シャロン・グレス、タイン・デイリー)がとり続けたというアメリカの1980年代を代表する作品の一つです。これもアメリカとは違い日本では人気が出ませんでした。
  
 ニューヨーク市警・NYPD第14分署の30代の女性刑事2人の社会派刑事ドラマです。
 2人はタフでも凄腕でもない普通の人間です。クリス・キャグニーは独身のキャリアウーマンでメリー・べス・レイシ―は子持ちの既婚者、美人のキャグニーと地味なレイシ―、保守派のキャグニーとリベラルなレイシ―。
 職業警察官として当時の犯罪都市ニューヨークに立ち向かいます。

 多くの場合、事件と2人や周囲の人たちの出来事が対応したり、社会の矛盾と向き合う事にもなる複雑なシナリオで単なる痛快な娯楽作品とは言えない内容です。上手く解決する事件だけではなく苦い余韻を残すことや不本意な解決を選ばざるを得ない場合もあります。
 双方ともプライベートや職場の人間関係でもトラブルはあり、普通の人間として自分自身の問題も抱えることも有ります。いわゆる「リアル」路線です。

 当時のアメリカ社会の問題を鋭くえぐる作品です。
 特に男性社会とされる警察と女性が被害に遭いやすい犯罪の問題、移民、人種、貧困、自由の国アメリカの矛盾、理想と現実、政治、家族の問題、麻薬やアルコールなど現代日本でも向き合わなければならない多くの事象に安易に「正解」を求めない姿勢は社会派ドラマの教科書といえると思います。
   
 だからといって暗い作品ではなく軽妙な会話と魅力的なキャラクターで良く練られた物語は全く退屈させられることはありません。大変充実感のある「面白い」作品です。
 この作品の少し前から近いタイプの(これも傑作)「ヒルストリート・ブルース」も放送されていますが個人的にはこちらの作品の方が好みです。
    
 以上が個人的な欧米テレビドラマベスト5(6作ですが)になりますが、これを基に「日本のドラマはなっていない」と主張するつもりはそれ程有りません。
 これらの作品は日本の数倍の市場規模を持つ英語圏の作品でもごく一部の作品です。
 特に日本や東アジア圏では日常的に抑圧が多い側面が有るのではないかとも考えますので、より「息抜き」的な軽いエンターテイメントの方が求められる部分が有るといえるのかもしれません。自分自身でも軽いコメディや痛快アクションやメロドラマ等のお約束の娯楽作品も充分に好きですし欧米でもそういった作品の方が主流でしょう。
 むしろ日本のドラマで価値の高い作品とされるものが長い間「面白さ」を等閑視していたのではないかと感じる部分が有ります。説教臭さが真面目さとされているところが有るようにも感じます。
 
 ただまあ、日本のドラマ(アニメも含む)とは異なる視点のある欧米のドラマを見るのもたまにはよいのではないかと思います。日本語版は声優の名演も見どころです。
   
【動画】(雰囲気だけでも)
 「刑事コジャック」(オープニング。日本語版ではここに森山周一郎の「ニューヨーク怒りの用心棒」云々のナレーションが入ります)


 「たどりつけばアラスカ」(全編英語で字幕なし)


 「ふたりは最高! ダーマ&グレッグ」(予告編)


スタートレック:ディープ・スペース・ナイン」(第6シーズンのオープニングです)


「特捜班CI-5」
(日本版のオープニング)

(ダイジェスト)


「女刑事キャグニー&レイシー」