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リテラシーと理解について考える

今どきの日本ハイファンタジー小説

 それ程小説を読む方ではないのですが、ここしばらくかため読みをした日本の比較的新しいハイファンタジー小説についての感想です。
        
 「ハイファンタジー」という概念の定義は正確に示す事はできませんが一応ここでは「異世界物」で、「ヒロイックファンタジー」「ゲーム系ファンタジー」と重複するが基本的には「お約束」的ではない独自の世界観を構築した(何らかのモデルは有ってもよい)時には「SF」とも一部重複もする作品とします。
 特に「骨太のハイファンタジー」という言い方をすると「エピック(叙事詩)ファンタジー」が基本で「指輪物語」が代表的な作品とされるようです。*1 *2

 勿論「骨太」「ハイファンタジー/ローファンタジー」や「ヒロイックファンタジー」「ゲーム系ファンタジー」「エブリデイマジック」「ライトファンタジー」を作品の価値が高いか低いかなどの上下関係を示す概念としては使うべきではないと認識しています。
 この記事で「ヒロイックファンタジー」「ゲームファンタジー」系のハイファンタジーに触れないのは単なる個人的な都合です。冒険活劇やコメディが嫌いなわけではありません。
【追記】ハイファンタジー以外の国産ファンタジーについては「現代日本ファンタジー幻想小説概観(大人向け)http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20161115/1479217294」に記事を書きました。
               
 最初にこちらの嗜好の基準を示すために過去に読んだ幾らか有名な作品についての感想を纏めて。
      
 現代の日本のファンタジー小説の代表的な作家として荻原規子上橋菜穂子が挙げられるでしょう。
      
 ハイファンタジーといえないでしょうが荻原規子の日本神話を題材に独自の世界を構築した勾玉三部作「空色勾玉」「白鳥異伝」「薄紅天女」+「風神秘抄」は良い作品でどれも面白かったです。ただ、自分がおっさんなので少し恋愛要素が強く感じられました。どちらかというと「少女マンガ」的な繊細な作風でしょうか。
 「西の善き魔女」シリーズはマンガで読み、「RDG レッドデータガール」は小説で読みました。いずれも少女の成長を描いた作品です。
    
 文化人類学者でもある上橋菜穂子の方が基本的に好みです。
 これも日本古代史モチーフの「月の森に、カミよ眠れ」とSF「精霊の木」は幾らか「ニューエージ」風の作品で時代を感じました。こんな言い方はなんですが「若書き」の瑞々しさを感じます。戦国ファンタジー「狐笛のかなた」は切なさのある佳品だと思います。
 「守り人シリーズ」の「精霊の守り人」「闇の守り人」「夢の守り人」「虚空の旅人」「神の守り人(上.下)」「蒼路の旅人」「天と地の守り人 (1.2.3)」「流れ行く者 守り人短篇集」「炎路を行く者 守り人作品集」は日本のハイファンタジーの最高傑作といえる作品だと思いました。民俗・文化・社会・政治・歴史・魔法・異界にわたる世界観の構築、ストーリーや描写の深さ、キャラクターの魅力、アクションの迫力、読後感のバランスも良く、ポピュラリティもあり「アジアンファンタジー」として大変レベルの高い完成度を感じました。お勧めです。
 「獣の奏者」シリーズは殆ど魔法が出ないタイプの異世界物です。特に生物の生態と文化のタブー等の社会を主題にした世界構築の深さには感銘を受けます。エンターテイメント性より物語として深さを感じました。
【追記】本屋大賞受賞作「鹿の王」も生物と病をテーマにした作品。
  
 あともう一人、ミステリー系作家でもある小野不由美の「十二国記」シリーズ「月の影 影の海」「風の海 迷宮の岸」「東の海神 西の滄海」「風の万里 黎明の空」「図南の翼」「黄昏の岸 暁の天」「華胥の幽夢」「丕緒の鳥」も挙げておきます。現世から地続きの中国的な神政並行世界の「チャイナファンタジー」です。
 「天命」が支配する世界の中で「人の意志」と「国家」の在り方を探ります。中国史演義小説の面白さを現代小説として再構築したような面白さがあります。
 未完なので注意。現在作者の筆が止まっているので完結するかは不明。
    
 上の物で特に好きなのは「虚空の旅人」「天と地の守り人 (1.2.3)」「図南の翼」。カタルシスの得られる比較的単純なエンターテイメントが好みのようです。
    
 最近の「骨太」ハイファンタジーの旗手、乾石智子の代表作は「オーリエラントの魔道師シリーズ」が挙げられるでしょう。
『夜の写本師』

夜の写本師 (創元推理文庫)

夜の写本師 (創元推理文庫)

『魔道師の月』
魔道師の月

魔道師の月

『太陽の石』
太陽の石

太陽の石

『沈黙の書』
沈黙の書

沈黙の書

『オーリエラントの魔道師たち』
オーリエラントの魔道師たち

オーリエラントの魔道師たち

 古代ローマ世界をモデルにした独自のオリエント風の世界で恐るべき力を持ち、その代わりに業を背負った魔道師達の宿命の戦いを描きます。
 テクノロジーとしての魔法が一般化し戦争の道具としても使われる社会で運命に翻弄され、呪われた戦いを続ける神話的なイメージの作品です。
 一作ごとに主人公も時代も異なる連作ですが一つの社会の歴史を年代記的に描きます。
 濃厚な描写とストレートなストーリーでグイグイと読ませます。基本的にどれから読み始めても良いのですが短編集の「オーリエラントの魔道師たち」から読むのがお手軽かもしれません。文庫化され始めているのでそれから読むのも手でしょう。
 シリーズ以外のハイファンタジー作品も「ディアスと月の誓約」「闇の虹水晶」「竜鏡の占人 リオランの鏡」「滅びの鐘」「炎のタペストリー」があります。
 
 逆に(タイトルとは異なり)基本的に魔法の出ないのがこちら高田大介の
『図書館の魔女』
図書館の魔女(上)

図書館の魔女(上)

図書館の魔女(下)

図書館の魔女(下)

 中世後期から近世初頭に似た時代背景の独自の「地中海的世界」を舞台に、知識と知恵をつかさどる「高い塔」図書館の「魔女」と彼女に仕える少年が「言葉」を武器にパワーポリティックスと陰謀に立ち向かうエンターテイメント性の高い作品です。
 本職の言語学者による言語・文字論と古書知識、文明論、産業技術、経済、軍略といった知識が豊富に詰め込まれ厚みのある世界観が示されます。物理法則なども基本的には我々の社会と殆ど同じ「異世界」です。
 ストーリーは波乱万丈でトリックや仕掛けも楽しくアクションも良くできていて、幾らか「ライトノベル」的なキャラクター設定もあり作品自体は読み易いといえます。
 ただ上下巻で1400ページ強、合わせて5000円+消費税という「物理的」な読みにくさがあります。続編売国奴の伝言」「図書館の魔女 烏の伝言」(仮題からタイトル変更)が刊行予定です。
 【追記】「図書館の魔女」本編が全4巻で文庫化されます。http://www.amazon.co.jp/dp/4062933659/
           
 もう一つは西魚リツコの
『暁と黄昏の狭間シリーズ(全6巻)』
暁と黄昏の狭間〈1〉竜魚の書 (トクマ・ノベルズedge)

暁と黄昏の狭間〈1〉竜魚の書 (トクマ・ノベルズedge)

 これは寧ろオーソドックスな「王国」ファンタジーです。海が干上がった大陸世界で対立する二大国の戦いに巻き込まれる小王国の少女の物語です。
 殆ど「科学」のように扱われる「新しい魔術」と神々の「古い魔術」の相克を描きます。奇怪な魔法結社、恐ろしい魔術師、荒ぶる神々。ダークファンタジーといえる闇の部分もあり独特の雰囲気があります。
 運命に翻弄される少女の成長と戦い、そしてロマンスが描かれます。主人公が毎回酷い目に合うのでご注意ください。 
 現在、新刊では手に入り難いようです。作者は「メキト・ベス漂流記」等意欲的にファンタジー作品を発表しています。

 これは小学校高学年以上の「児童書」の作品ですが菅野雪虫
『天山の巫女ソニンシリーズ(全7巻)』 古代朝鮮の三国時代をイメージしたアジアンファンタジーです(時代設定は近世初頭のようですが)。
 夢見(夢占い)と医療を行う巫女として育った少女が夢見の力が足らず巫女の地位を失い里に戻ります。ひょんな事から王子に仕え王宮に勤めるようになった少女が三国の政治に巻き込まれます。
 第1巻は幾らか「子供向け」の印象が強いのですが2巻以降は「骨太」な政治外交ドラマが描かれます。「魔法成分」も「ロマンス」も少なめです。
 人間描写が丁寧でキャラクターが魅力的なので大人でも楽しめます。
            
 社会制度や文化と政治経済について詳しく描くタイプの異世界ファンタジーでは「魔法」の扱いが難しいようです。上の「図書館の魔女」「天山の巫女」も幾らかの異能が出ますが本格的な「オカルト」的な設定はその世界で大きな力は持ちません。
 上橋菜穂子も「獣の奏者」でも「魔法」的な側面は少なく、どちらかというと「異世界再構築歴史」ドラマ的な作品とも読めます。
 これらが厳密に「ハイファンタジー」といえるのかは異論もあるかもしれません。現実世界と物理法則の変わらない「異世界再構築歴史」物はSFや歴史小説との線引きは難しいといえます。海外は知りませんが今の日本の「異世界ファンタジー」の傾向の一つといえるかもしれません。
 
 あとライトノベル系の作品は殆ど読んでいないので書きませんでした「異世界経済歴史」物「狼と香辛料」等も充分ハイファンタジーといえるかもしれません。他にも独自の魔法世界を描く作品も少なくはないようです。マンガやアニメーションの(場合によってはゲームも)「ハイファンタジー」作品もあります。
        
【追記1】
 ライトノベル系ともいえる多崎礼
『夢の上シリーズ(全4巻)』も
夢の上〈1〉翠輝晶・蒼輝晶 (C・NOVELSファンタジア)

夢の上〈1〉翠輝晶・蒼輝晶 (C・NOVELSファンタジア)

 天には「神」の重石が空を覆い、地には呪われた魂「死影」が跋扈する専制的神権王国での人々の夢と未来への戦いを群像劇で、それぞれ別々の一人称話者の中編連作6話(1冊2話)と番外編1冊で一つの時代を立体的に描いたユニークな構成です。
 独特な設定としっとりとした描写で「人の思い」を描きます。各話とも基本的には所謂ハッピーエンド的な終わり方はしません。魔法有。
 作者は他にも同じくファンタジー連作「煌夜祭」、ユニークな長編西部劇風ファンタジー「“本の姫”は謳う」、和風”漢字”ファンタジー(らしい、未読)「八百万の神に問う」といったオリジナリティーのある作品を発表しています。
                       
【追記2】
 阿部智里の「金烏シリーズ(仮称)」八咫烏シリーズ」もハイファンタジーといえるでしょうか。
『烏に単は似合わない』
烏に単は似合わない? 八咫烏シリーズ 1 (文春文庫)

烏に単は似合わない? 八咫烏シリーズ 1 (文春文庫)

『烏は主を選ばない』
烏は主を選ばない 八咫烏シリーズ 2

烏は主を選ばない 八咫烏シリーズ 2

『黄金の烏』
黄金の烏 八咫烏シリーズ 3

黄金の烏 八咫烏シリーズ 3

 鳥人八咫烏」の国「山内」宗主の後継者「若宮」を廻る平安朝風宮廷サスペンスからはじまる和風ファンタジー
 第一巻の「単は似合わない」がトリッキーなミステリ調で好みが分かれるようですが第三巻「黄金の烏」からファンタジー色が強くなります。
 軽快で読みやすいのですが良く練られた構成とディテールが好ましく感じます。
 まだまだ完結していないので評価は難しいのですが期待出来る作品です。
(【補足】全6巻になる予定)
           
【追記3】
『十三番目の王子』岡田剛
十三番目の王子 (創元推理文庫)

十三番目の王子 (創元推理文庫)

 「神の眷属」である王族が統治する神王国の死病の蔓延する極北の寒地で三人の若者が運命に抗います。神王国の秘密、信仰、陰謀。
 濃密な文章で非情な戦いが描かれます。魔法有。
 幾らかダーク系で重い内容の作品ですが続編の予定もあるそうです。
           
 電子書籍限定配信されていた小路幸也「旅者の歌シリーズ」も
『旅者の歌 始まりの地』
旅者の歌 始まりの地 (幻冬舎文庫)

旅者の歌 始まりの地 (幻冬舎文庫)

 一種の理想郷「シィフル」に生きる人々の通過儀礼「試しの日」、そこで起きる「事件」、神秘的な運命に翻弄される若者達。
 導かれ外の世界に旅立つ「旅者(りょしゃ)」、「世界」の秘密をめぐるロードノベル。
 説話的な語り口と神話的で興味深い世界観、完結が楽しみです。続刊『中途の王』も。第三部完結編連載中、特設サイトhttp://www.gentosha.co.jp/ryosha/
 【補足】「旅者の歌」第三部は第二部と合本され文庫『旅者の歌 魂の地より』として出版されました。結果的に作品としては2015年末時点では全3巻では未完状態とも考えられます。
          
【追記4】
 これもライトノベル系でネット連載Web小説(完結)だった支援BISの
『辺境の老騎士シリーズ』
辺境の老騎士 1

辺境の老騎士 1

 辺境での魔獣らとの戦いを生きた歴戦の勇者・老騎士が主家を離れ新たな旅に出る。出会い、旅のグルメ、魔剣、新たな戦い、回りだす運命の歯車。
 ゲーム系ファンタジーの枠組みをベースにしながらも独自の世界を描きます。「キャラクター小説」や「時代劇」的な楽しみ方も出来ます。5巻位で完結するようです。
                      
【追記5】「ハイファンタジー」とするか微妙な作品。
 少女向けの児童書で濱野京子の「シューマ平原シリーズ」三部作
『碧空の果てに』http://www.amazon.co.jp/dp/4041012295
『白い月の丘で』http://www.amazon.co.jp/dp/4041018080
『紅に輝く河』http://www.amazon.co.jp/dp/4041018455
 架空の平原の幾らか中世中欧風の印象もある小さな国々の歴史が1冊おきに約10年、都合20年ほどの社会の進歩をそれぞれ別の国の異なった主人公の物語で。
 (幾らか型破りの)姫や王子が主役の「ロマンスファンタジー」といってもよい作品です。ポリティカルでモダンな作品で殆ど魔法は有りません。
            
 同じく少女向け児童書で香月日輪
『ファンム・アレースシリーズ(全6巻)』http://www.amazon.co.jp/dp/4062778564
 宿命を負う少女が「用心棒」の剣士らと共に運命を切り開く。幾つもの国に分かれた大きな島。魔法と亜人・妖精達。
 これは異世界「アドベンチャー・ロマンス・ライトファンタジー」。会話が「甘い」のでおじさん向きではないかもしれません。
   
 ここでいう「ハイファンタジー」ではないですが良質なファンタジー小説
『蕃東国年代記西崎憲
蕃東国年代記

蕃東国年代記

 架空の地球の日本海に浮かぶ島国「蕃東国」。倭国(日本)の影響の濃い独自の夢幻世界、その平安期にあたる時代の奇譚・霊異譚を流麗な文章で軽妙かつ無残に物語る。短編小説集ならではの技巧。 
 偽史と説話的な語りによって異世界に誘う「ファンタジー」であるとともに「幻想文学」でもあり、かの『後宮小説』や『完全な真空』を思わせる優れた小説。

【追記6】
 こちらは魔法の全く出てこない*3異世界再構築歴史」物  
 沢村凜『黄金の王 白銀の王』

黄金の王 白銀の王 (角川文庫)

黄金の王 白銀の王 (角川文庫)

 中世日本をイメージした大陸から離れた島国「翠」。長きに渡り血で血を洗う戦いを続ける二つの王族。
 その時代、島を支配した片方の王が囚われのもう一方の王に一つの提案を行う。
 若き二人の「王」が歩む長く厳しい道のり。陰謀、氏族、戦争、愛憎、悲劇、希望。
 複数の人物の視点から歴史を描く「骨太」な「ポリティカルファンタジー」。
 大変読み応えがあります。

 冴崎伸『忘れ村のイェンと深海の犬』    

忘れ村のイェンと深海の犬

忘れ村のイェンと深海の犬

 神獣、魔獣が跋扈しヒトが生態系の頂点を占めない異世界。貧しい村の「おてんば」少女が禁忌を破り、弱った「獣」を助けてしまう。
 現代欧米ファンタジーを思わせるよく考えられた独自の壮大な設定、世界観。
 作品自体はシリーズ物の第1巻として書かれた物らしく幾らか説明的ですが、複雑な人間像をも描こうとする姿勢には期待したいです。
   
【追記7】新設された「創元ファンタジイ新人賞 http://www.tsogen.co.jp/award/fantasy/」がハイファンタジー志向のようです。
 受賞作第一弾(審査員特別賞)、羽角曜『影王の都』が出ました。
影王の都 (創元推理文庫)

影王の都 (創元推理文庫)

 砂漠の呪われた都に住む「影王」、喋る髑髏と旅立つ少女、絡み合う運命。
 人の弱さ、愚かさ、業。魔法と謎。複雑な構成、繊細な文章。
 作者もこの賞もこの先楽しみです。

【追記8】第1回創元ファンタジイ新人賞優秀賞の佐藤さくら『魔導の系譜』。

 魔導士(魔法使い)が差別される国で「三流魔導士」の私塾に預けられた少年の成長と師弟愛、そして社会の矛盾が描かれます。続編の予定有り。
      
 続いて創元社文庫では単行本で中断していた遠藤文子の「サラファーンの星シリーズ」が『星の羅針盤』から再開、全4巻の予定。
星の羅針盤 (サラファーンの星1) (創元推理文庫)

星の羅針盤 (サラファーンの星1) (創元推理文庫)

 まるで西洋近代初期の様な世界で神秘的な種族から宝を奪った専制君主による征服戦争から逃れた少女の避難先での様々な出会い。運命に立ち向かう人々。魔法有り。
 佐藤さくらはこれがデビュー作で遠藤文子は今作につながる「ユリディケ」で1989年にデビュー。

*1:【補足】個人的な見解でいうと「ハイファンタジー」というのは基本的に特に理由がない場合その作品の登場人物の認識や世界観や文化・言語が作品の時代や文明レベルに見合った「(多くの場合古代・中世や近世レベルの)その世界の住人」の枠にあるもので、まるで現代日本人の様な「近代」的な認識や世界観や文化・言語であるというタイプの作品は「ハイファンタジー」とはしないと考えます。ただし多くの作品の「主人公」的なキャラクターや利口な人物はその世界の中では比較的に先進的な準近代的乃至は合理的な考えを持っているというのも一般的で、「その世界」の中では読者が共感しやすい位置にあるという作品も、余りに乖離していなければ問題はないとしています。つまり「現代人」的なキャラクターらによるコスチュームプレー的な異世界ファンタジーは「ライトファンタジー」だと理解しています。勿論線引きの難しい作品も有ります。

*2:【補足2】基本的に「お約束」といえる異世界設定を舞台装置、いわば道具として用いる作品はその主題から「ヒロイックファンタジー」「バトルファンジー」「アドベンチャーファンタジー」「ロマンスファンタジー」等と分類しています(「ハイファンタジー」にもヒ−ローもいて戦いや冒険もロマンスもありますが主観的に主題であるかどうかを判断しています)。その中でも(「指輪物語」等をベースにしていても)ゲームの影響が強く読み取れるものを「ゲーム(系)ファンタジー」とも認識しています。勿論厳密に区別できるものとは考えません、一つの作品がファンタジーの分類だけではなくSFやミステリも含めた複数のカテゴリーの側面を持つ事も少なくはないともいえます。この記事では「ハイファンタジー」を少し広めに認めているつもりです。そして「現実」社会との接点があるものは程度によりますが基本的に「ローファンタジー」とします、今はやりの「転生」物の多くは「ローファンタジー」の側面が強いと考えるので「ハイファンタジー」としません。

*3:【補足3】ネットで見て気になった表現ですがファンタジー作品について「魔法に逃げる」等といった「魔法」の使用について厳しいコメントを見ましたが、実際は「魔法」を使いつつ「ハイファンタジー作品」を作るのは普通に優れた「異世界歴史再構築」物を作るのと負けない位難しいもので、むしろ安易な「仮想歴史」物でもご都合主義的な作品もあり得て「魔法」のある「異世界」の説得力のある作品は難しいのではないかと思います。個人的には「魔法」に正面から立ち向かう作品は評価すべき作品だと考えます。