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リテラシーと理解について考える

日本で韓国・朝鮮史を知りたいと考える一人として

 きつい事を書きます。読まれる方はご注意を。
               
>【入門】初心者からの韓国・朝鮮史
http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20130512/1368292890
 何らかの利害や感情の入りやすい状況にある場合に「歴史」はその「バイアス」にさらされ易いといえるでしょう。
 日本でも集団や思想などの「政治的」な目的から偏った理解や表現によって事実関係について誤解を生じやすく、修正は容易ではありません。日本でも「学問的な確からしさ」よりも「政治的な正しさ」によって「歴史」を理解する状況はあります。「結論ありき」で情報を選択し、自らの主張にとって都合の良い部分を強調するような記述も少なくは有りません。
 近年日本ではその状況について学問的なレベルでは改善されてきてはいますが社会的な合意とされるのは容易では無いでしょう。
 上に挙げた本ではその点についても意識をし、幾らかでも工夫が見られます。
 この問題はどこの国にでもあり、勿論それは韓国等でも同じです。
    
 幾らか刺激的な書き様で内容・解釈のすべてが妥当だとは考えませんが韓国・朝鮮史の「歴史」に一石を投じる本です。
>「大韓民国の物語」李榮薫 文藝春秋

大韓民国の物語

大韓民国の物語

 韓国の教科書と事実関係よりも「政治的正しさ」が重要視されやすい「自国の歴史認識」について実証経済史家の立場から疑問を呈したものです。
 実際韓国の歴史教科書は日本でも翻訳出版されていますが「教育的効果」を重んじる「愛国的」な側面が見られるもので学問的に現在妥当とされる歴史とは些か異なります。事情はわかりますが個人的には初心者の日本人が韓国・朝鮮の歴史を学ぶ本としてはそれ程お勧めできません。
         
 勿論逆に日本の「嫌韓」の人の書かれる「韓国・朝鮮の歴史」についてはまともな通史自体まず無く、特定の事象のみを過剰に強調したもの、偏見、無知、意地の悪い表現、あげつらう為の曲解や事実誤認、一部では明らかな間違いも見られます。むき出しの悪意に辟易する事も少なくありません。
 読者も自分たちの違和感や嫌悪感を補強する為の情報しか求めません。
        
 ではその人たちが「反日」と呼ぶような立場からの「韓国・朝鮮の歴史」はどうなのでしょう。
「韓国・朝鮮の歴史」の本にも関わらず多くのそれらの本では「日本」との関係の部分のみが強調され、特に近代「日帝」の悪行が記述の多くを占めます。通史としながらも半分以上がそれらの時代を描く事に費やされている書籍も少なくは有りません。思想や価値判断を含む用語や表現等もあり入門書として適切なものは多くありません。
           
 日本国内の日本史一般書でも少なくないように現地、韓国朝鮮からの翻訳本でも主張の強い書籍は多く、一般書・入門書レベルでは寧ろ現在の日本の実証的な専門家らの書く本の方がバランスが良いと感じます。「本人が言うことだから正しい」はリテラシーに問題があり、相手の立場を過剰に慮るのは寧ろ権威主義です。
         
 何れにしろ理解の為に隣国の歴史を学びたいとする立場から見れば大変不効率になります。知的好奇心から興味を持つ読者を遠ざけている用にも感じます。寧ろ近年の「韓流時代劇」の薀蓄ファンブックの方が「まし」にも見えます。
 「正義と真実」の為とはいえ読者を「入門書」レベルでコントロールしようとする意図をあからさまに感じさせるのは逆効果にも思えます。過度な意味づけは別の意味づけを招きます。冷静な理解の妨げにつながります。
 あからさまに歴史を「政治的」「教育的」に「活用(利用)」しようとする姿勢は結果的に違和感を感じさせ、事実関係の理解を妨げる事にもなります。
     
 歴史を特定の誰かを「叩く」為の都合の良い道具として扱い、政治的な所有物として扱うのは理解にも勝利にも繋がりません。偏りを正す為に反対側に偏らせるという手法は寧ろ分断と対立しか招きません。
 「韓国・朝鮮の歴史を知りたい」と表明するだけで「政治的な」色眼鏡で見られる事さえ想像出来ます。
 実際、韓国・朝鮮の歴史を通史で学ぶ本はそれ程多くは存在しません。街の書店で手に入れるのは容易とはいえないでしょう。
 ですが出来るだけ確からしい事実関係を知るところから始るべきだと考えます。
   
【関連記事】「学校では教わらない日本の歴史」
http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20120109/1326091007