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リテラシーと理解について考える

【入門】初心者からの韓国・朝鮮史本

 隣国にもかかわらずあまり知られていないかもしれないのが韓国・朝鮮の歴史です。
    
 最近では日本でもエンターテイメントで取り上げられる事も多いのですが「通史」としての韓国・朝鮮の歴史についてはどれほど知られているのでしょう。比較的中国の歴史には詳しい日本人ですが、韓国・朝鮮の「通史」、つまり特定の時代・事象に限らない「全時代」的な歴史の流れについては知識を得る機会は少ないといえるのかも知れません。特に近代以前については殆ど知らない人も少なくは無いでしょう。
          
 近年では「韓国時代劇」がブームになるなど幾らか風向きは変わっていますが通史としての知識はそれ程一般的では無いとも感じます。ドラマの場合は娯楽作品としての脚色や演出で現在の学問的に妥当とされる「歴史」とは異なる場合も有ります。
 好き嫌い、敵味方は別にして合理的な根拠に基づく知識は役に立つかもしれません。
            
 専門家の知見に基づく何らかの書物で韓国・朝鮮の歴史を得るのが妥当だと考えますが、どの世界でも書店や図書館等でどの本を読むべきかを選ぶのは「初心者」には難しいのが当たり前です。「はずれ」を掴みたくは無いものです。良い入門書との出会いは適切な理解につながります。
 興味がある人でも最初はどこから手を付ければよいかは迷うところです。
 価値判断は後回しにして、とりあえず知識を得るための書籍を個人的な経験から紹介してみましょう。
     
 現在、最も平易で読み易く、バランスも良くレベルも充分高いように感じるのがこちら
>「韓国の歴史」水野俊平 河出書房新社

韓国の歴史

韓国の歴史

 ポイントを押さえ、適切に歴史の流れを理解できる様に工夫されています。
 それ程歴史に興味が無い人にでも余り無理なく読め、記述量の時代配分も妥当に感じます。
 コストパフォーマンスがよく「まず1冊読む」という人には最善でお勧めします。
      
 こちらも読み易い。     
>「歴史物語 朝鮮半島姜在彦 朝日選書
歴史物語 朝鮮半島 (朝日選書)

歴史物語 朝鮮半島 (朝日選書)

 この本では近代以前の歴史に多くが割かれています。近現代史については余り触れず(既に他の本で書かれている)、古代史についても「流し気味」です。この方の他の本での近現代史については主張が強く感じられますがこの本では比較的に学問的な事実関係が語られます。
 ただ一部決め付けや思い込みとしか思えない部分もあります。
   
 幾らか古いのと文章が硬いのですが写真が多くイメージを掴みやすい。
>「図版 韓国の歴史」 金両基,姜徳相,鄭早苗,中山清隆 河出書房新社
図説韓国の歴史 (ふくろうの本)

図説韓国の歴史 (ふくろうの本)

    
 「東北アジア史」の枠組みで同時代の周辺国との関連を掴みやすいのは。
>「東アジア三国史田中俊明 日本実業出版社
日本・中国・朝鮮東アジア三国史

日本・中国・朝鮮東アジア三国史

 北方民族の動向も含め夫々の立場や事情について理解できます。
   
 古い本ですが大まかな歴史が捉えられる
>「朝鮮 (地域からの世界史)」朝日新聞社
朝鮮 (地域からの世界史)

朝鮮 (地域からの世界史)

 このシリーズは大変素晴らしく個人的に大きな影響を受けています。
 コンパクトで大変読み易く短時間で読む事が出来ます。図書館か古本でも。
  
【追加】此方はもっとコンパクト
朝鮮史 (増補新版) 李玉/ 金容権 白水社文庫クセジュ
朝鮮史 (文庫クセジュ)

朝鮮史 (文庫クセジュ)

 パリ在住の研究者(故人)がヨーロッパ(おそらくフランス)人向けに書いた韓国・朝鮮史入門書。記述はバランスがよいのですが文化美術史が多めで政治経済史はもの足りません。
 訳者補遺の現代史は逆に政治的で異質。
                
 「歴史好き」を自任する方で「がっちり詳しく知りたい」という方には大著ですが   
>「朝鮮史 (新版 世界各国史)」武田幸男・編 山川出版社
朝鮮史 (新版 世界各国史)

朝鮮史 (新版 世界各国史)

 2000年の本で少し「古い」と感じる見解の部分もありますが高水準で有りながら比較的読み易く素晴らしい本です。
        
 比較的新しい研究動向については
>「朝鮮の歴史―先史から現代」田中俊明・編 昭和堂
朝鮮の歴史―先史から現代

朝鮮の歴史―先史から現代

 が纏まっています。情報量は多いですが、多少読みにくいのと幾らか誤記もみえます。
 残念ながら現代史と近代史の一部には表現と情報選択に価値判断的な意図が感じられます。
 この本と上の山川朝鮮史は古代史についての記述も詳しいです。