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リテラシーと理解について考える

近代以前の投射兵器の威力を検討してみる その4(資料編)

 その1 http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20120430/1335773078 
 その2 http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20120506/1336314040
 その3 http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20120512/1336752249
  
 一応参考文献です。
 具体的な威力については書かれている資料は少なかったのですが考え方の参考や傍証として読みました。感想なんかも書いています。
 相当前に読んだ物やななめ読みしかしていない本もあるのであまり信用しないでください。畳んでますがご興味のある方は開いてください。
      
>武器―歴史,形,用法,威力 ダイヤグラムグループ編 田島優・北村幸一訳 マール社 

武器

武器

 古典的なロングセラーで(刊1980、邦訳1982)インターネット以前の日本の創作物では多く用いられたネタ本です。手持ち武器、、手投げ武器、携帯用発射装置、脚架付き発射装置、定置武器、爆弾およびミサイル、化学兵器核兵器生物兵器の各項目について入門書として平易に正確に書かれています。
 網羅的なので各項目については絶対量は少なく偏りもあり内容は古くなっているのですが正確なイラストとコントラストを明瞭にした白黒写真がわかり易いように思います。
       
>図説 中国の伝統武器 伯仲 著 中川友訳 マール社 
図説中国の伝統武器

図説中国の伝統武器

 中国の前近代の武器がカラーイラストで描かれています。
 網羅的には書かれていますが情報が少なく具体的な部分がわかり難いです。
        
>図説日本合戦武具事典 笹間良彦 柏書房
図説日本合戦武具事典

図説日本合戦武具事典

 日本の武具についての基本的な資料といえる大著。図版も多く刀剣弓鑓甲冑から陣立てや馬具、装束まで網羅した本で、日本の武具の形状や使用法、歴史についてとても具体的に詳しく書かれています。
      
>戦国武器甲冑事典 中西豪 大山格 誠文堂新光社
戦国武器甲冑事典

戦国武器甲冑事典

 戦国時代の武具を解説とイラストで。武将の「伝来」の甲冑とエピソードも書かれていますが幾らか軽めの内容。
            
>図解「武器」の日本史―その知られざる威力と形状 戸部 民夫 ベスト新書
図解「武器」の日本史―その知られざる威力と形状 (ベスト新書)

図解「武器」の日本史―その知られざる威力と形状 (ベスト新書)

 日本で用いられた武器について解説とイラスト。ほぼ既存の資料から上手く集めた物。忍具にも言及。
             
>歴史図解 戦国合戦マニュアル 東郷隆 上田信
歴史図解 戦国合戦マニュアル

歴史図解 戦国合戦マニュアル

 戦国時代の兵装や作法について時代考証としてのポイントをわかりやすくコンパクトに纏めてあります。現在「歴史・時代小説ファン必携 【絵解き】戦国武士の合戦心得 (講談社文庫」)」として再販されています。
                  
>図説・日本武器集成―決定版 (歴史群像シリーズ) [ムック] 学研
図説・日本武器集成―決定版 (歴史群像シリーズ)

図説・日本武器集成―決定版 (歴史群像シリーズ)

 先日やっと目を通せました。近代以前の日本の武具について豊富な図版と詳細な解説が書かれます。
 この一連の記事と同じ意図もある本で日本の弓や火縄銃の威力について実験しています。ほぼ同様な結論です。早合についてはこの本では「10秒以内での装填が可能」としています。此方の見解は修正します。
 ただ火縄銃の威力を調べる際に何故か軍用では余り使わない9mm=一匁玉(通常の軍用は三〜六匁玉、須川氏の実験も10mm一匁五分玉)で実験、精度実験はそれ以下の8mm口径(八分玉か)、何故かその記事の木や竹での測定では六匁玉三匁玉が用いられ同じ文内での口径等の単位の表示もちぐはぐでした。
 武術・忍術にも多く紙面が割かれ、全般に「時代劇」調で現在の説とはいえない記事もあります。
        
>新版 雑兵物語  かもよしひさ訳 パロル舎
雑兵物語

雑兵物語

 戦国末期の軍役を「雑兵」からの口伝として江戸時代初期頃に纏めたほぼ同時代の重要資料。戦陣のリアルな心得。
 幾らか軽妙な書きようですが厳しい現実の戦場の姿が読み取れます。この版は厳密には正確さが欠けるでしょうが読み易い現代語訳と多少古いが詳細な解説です。
                            
>騎兵と歩兵の中世史 (歴史文化ライブラリー) 近藤好和 吉川弘文館
騎兵と歩兵の中世史 (歴史文化ライブラリー)

騎兵と歩兵の中世史 (歴史文化ライブラリー)

 近世江戸時代や明治以降、イデオロギーで曲げられ解釈された日本の軍事史を一次資料から読み直し実像に迫る重要な研究。
 弓射・打物、騎兵・歩兵という分類を軸に史料から分析し、兵装・戦術についての変化を明らかにします。
              
>武具の日本史 正倉院遺品から洋式火器まで 近藤好和 平凡社新書
武具の日本史 正倉院遺品から洋式火器まで (平凡社新書)

武具の日本史 正倉院遺品から洋式火器まで (平凡社新書)

 有識故実の専門家でもある著者が日本の武具の歴史について、伝説ではなく同時代的な史料を基に具体的且つ正確に実像を明らかにします。
 著者の専門外の銃についてもほぼ正確に書かれている点から視ても一定の評価は出来ると考えます。
 今回の記事の歴史的な用語についてはこの説を参考にしました。図版は少ないものの情報量が多くとても価値のある本です。
          
>戦国の軍隊: 現代軍事学から見た戦国大名の軍勢 西股総生
戦国の軍隊―現代軍事学から見た戦国大名の軍勢

戦国の軍隊―現代軍事学から見た戦国大名の軍勢

 最新の歴史研究を基に戦国時代の「いくさ」を軍事学的に分析しています。研究が進んでいる後北条氏の軍制が中心になります。
 近年見られる安易な「軍事の天才織田信長」像の虚妄をも明らかにします。
            
>図解古銃事典 所荘吉 雄山閣 
図解古銃事典

図解古銃事典

 現存する日本の古銃を中心に近代初期までの銃の歴史を豊富な写真資料とともに堅実に述べてあります。古銃研究には必携の重要な名著です。
     
>別冊GUN Part5 GUNのパワーとメカニズム 国際出版 たしかPart1辺りに火縄銃があったような記憶もありましたが本は手元にありません。コンクリートブロックやボトル「人体」に見立てた粘土等に銃弾を打ち込んだ実験やメカニズムについて。古い本です。
      
>図説古代の武器・防具・戦術百科 マーティン J.ドアティ 原書房
図説古代の武器・防具・戦術百科

図説古代の武器・防具・戦術百科

>図説中世ヨーロッパ武器・防具・戦術百科 マーティン J.ドアティ 原書房
図説中世ヨーロッパ武器・防具・戦術百科

図説中世ヨーロッパ武器・防具・戦術百科

 古代・中世ヨーロッパ(一部オリエント世界)の軍事史を重要な戦闘の事例で活写します。
 軍制・武装・戦術の変化を網羅的に纏めた大著です。各事例については短めですが多くの戦闘について書かれているので情報の密度はあります。図版も多くあります。
 実像のわかり難い(たぶん現場に居てもわからない)戦闘を可能な限り明らかにしようとしています。ただし西洋中心史観なので偏りもあります。
 共和制末期のローマ、三頭政治で知られるクラッススの対パルティア戦・カルラエの戦いも投射兵器戦として興味深いものでした。
     
 他にもまだ全部読んではいませんがヨーロッパの戦争は
「戦闘技術の歴史1 古代編2 中世編3 近世編」が上のドアティの本と内容や図版は重なるものの読み応えがあります。
            
 ヨーロッパ以外だと
「HANDBOOK 戦略戦術兵器事典 中国編 (歴史群像グラフィック戦史シリーズ)」
に中国の戦史についての概論があります。内容の妥当性はわかりません。(このシリーズでは何度も別タイトルでほぼ同内容が再刊されています、注意して下さい)
   
【追記1】
>兵器と戦術の世界史 (中公文庫) 金子常規
兵器と戦術の世界史 (中公文庫)

兵器と戦術の世界史 (中公文庫)

 幾らか古い内容ながら戦術の変化を投射兵器(火力)を軸として、特に銃砲一般化以降の戦術の歴史にも詳しい。   
【追記2】
>火器の誕生とヨーロッパの戦争 バート・S・ホール 平凡社
火器の誕生とヨーロッパの戦争

火器の誕生とヨーロッパの戦争

 中国で発明されイスラム世界を通じ伝えられた銃火器がなぜヨーロッパで完成され、それを用いヨーロッパが世界を支配するに至ったか。
 単なる発展史観ではない技術軍事史
 重要な研究です。図書館ででもぜひ読んでください。
【追記3】
>飛び道具の人類史―火を投げるサルが宇宙を飛ぶまで アルフレッド・W. クロスビー  紀伊國屋書店
飛び道具の人類史―火を投げるサルが宇宙を飛ぶまで

飛び道具の人類史―火を投げるサルが宇宙を飛ぶまで

 ヒトの特殊技能である投擲・投射能力。投石・投槍から弓矢を経て火薬・ロケットまで。
 「投げる」為の身体構造から情報処理の特性。生態系・社会的影響。 
 人間の「強さ」でもあり「業」でもある「飛び道具」の進歩。
            
【関連記事】
 猟銃の威力と用途 http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20121106