はてなビックリマーク

リテラシーと理解について考える

読書メモ抜粋その4

はてなブックマーク」に書いている「100字読書メモ」の一部、現在200冊強の簡易紹介です。
 飲食、酒造、歴史、刃物、銃刀、軍事等。
 最新>http://b.hatena.ne.jp/settu-jp/?url=http://www.amazon.co.jp/

雑穀の自然史―その起源と文化を求めて

雑穀の自然史―その起源と文化を求めて

生産性や加工の事情で主穀にならなかった雑穀と呼ばれる植物の種子。今も世界で作られる知られざる農業史の脇役の多様で豊かな歴史。穀物になれなかった「雑草」達も。民族農業育種植物学等専門家の興味深い研究 2013/01/03

朝鮮からみた華夷思想 (世界史リブレット)

朝鮮からみた華夷思想 (世界史リブレット)

韓半島特に朝鮮王朝期の中華文明・儒教の受容と内面化において為された華夷思想の解釈と現実の政治の中で王権両班層らの統治論理の中での抽象化された「中華」。東アジア近代以前の非対称外交。元号や性理学等新儒学 2013/01/27

清朝と近代世界――19世紀〈シリーズ 中国近現代史 1〉 (岩波新書)

清朝と近代世界――19世紀〈シリーズ 中国近現代史 1〉 (岩波新書)

中国清朝が西洋近代との対峙に苦悩しながらも立ち向かい力尽きた姿を描き出す。優れた皇帝と完成された政治機構を持つ豊かな大国が滅びる不運。政治経済についても詳しい。良書。軍事技術については他の本で補足を 2013/02/23

パイの歴史物語 (お菓子の図書館)

パイの歴史物語 (お菓子の図書館)

パンとは似て非なる歴史を持つ「小麦粉”料理”パイ」。定義すら容易でないその歴史の興味深いエピソードを縦横無尽に語りつくす。容器として、建材として、楽しみとして、恐怖としてのパイ。面白いが要検証の部分も 2013/03/10

銃器大百科

銃器大百科

正しくは「小火器発展史」とすべき大著。軍用銃砲の成立について大変詳しく勉強になる。ただ見解に偏りもあり要検証、一部典拠がわかりにくい部分は残念。343Pの写真は間違い 2013/03/25

メロンパンの真実

メロンパンの真実

実は正体不明のメロンパン。日本独自の菓子パン文化にまでも視点を広げる探求の旅。取材コストの都合か物足りない部分もあるが丁寧。軽い本だが科学記者、裏取りも有る。文庫化済/http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37294 2013/03/31

ファミリーレストラン 「外食」の近現代史 (光文社新書)

ファミリーレストラン 「外食」の近現代史 (光文社新書)

日本の食と生活の大きな画期ファミリーレストラン。近代外食の成立から戦後消費社会と共に歩んだ歴史。公刊情報から資料を纏めた労作、著者の本では最良。気になる点も有るが具体的で軽く読み易い 2013/04/05

ハンバーガーの世紀

ハンバーガーの世紀

グローバル経済の食の怪物ハンバーガー。20世紀に生まれ世界を席巻し愛され憎まれた小さな征服者。米国の田舎で発明された軽食が時代の要請と個性豊かな起業家の創意で巨大産業へ。米国史中心。情報の扱いは丁寧 2013/04/21

維新から敗戦までの陸海軍マネジメント。藩閥官軍から国軍への移行、属人要素を廃した非政治的軍を目指す制度改革、軍官僚による自立から軍主導の総力戦体制への変容。最新実証研究論文集。バイアスが少なく面白い 2013/05/01

中国「反日」の源流 (講談社選書メチエ)

中国「反日」の源流 (講談社選書メチエ)

タイトルは怪しげですが中国近代・国際関係史の専門家が近世からの日中相克、実は大きく異なる日清両国の政治体制社会制度から近代「ウエスタンインパクト」への対応を描きます。具体的で大変面白い 2013/05/19

魯山人と星岡茶寮の料理

魯山人と星岡茶寮の料理

魯山人のレシピの再現は比較的シンプル。店秘蔵の良作魯山人(工房)器の盛り付け競演は楽しい、桃山陶から宗和までの美的センスの再構成がわかる。後半T氏による新資料注釈(活動前期中心)は興味深い、マニア向け 2013/05/28

味覚と嗜好のサイエンス [京大人気講義シリーズ]

味覚と嗜好のサイエンス [京大人気講義シリーズ]

「美味しさ」を生み出す「味覚」と「嗜好」を検討。食品・栄養化学から現在の生理学等の研究成果を紹介。大変勉強になる。読み易く情報量も多いが幾らか先走りの仮説と文化論は偏りも 2013/06/08

世界のウスターソース類

 日本以外の海外のウスターソース類について調べてみました。

 オリジナルのウースターソース(又はウースターシャ―ソース)はインドのスパイスを基にイギリスで生まれたものとされます。モルトヴィネガーにアンチョビとスパイス、塩・砂糖と香味野菜を入れ熟成させたものです。
       
 英米を中心に欧米では元祖である「リーペリン LEA&PERRINS」がスタンダードで(実はイギリスとアメリカではレシピが異なり味が違うらしい)、その類似品も有ります。アメリカの「ハインツ」ブランドの物もひろく売られているようです(リーペリンも現在ハインツ社傘下)。
 多くは直接かけそれだけで味をつけるというよりも隠し味などに使うスパイスソースの役割です。
 同じようなソースには沖縄でもよく使われる「クラフト」の「A.1ステーキ・ソース」もあります。
 もともとイギリスのブランドらしい(現在ハインツが生産する)「HP」のブラウンソースはお好み焼きソースにも少し似た甘めのソースらしいですhttp://www.heinz.co.uk/en/products/hp-sauce/products/hp-brown-sauce
 デンマークでは「Engelsk(イギリス)Sauce」といわれ「ボ―ヴェ」http://www.beauvais.dk/produkter/saucer-og-dressinger/saucer/beauvais-engelsk-sauce.aspxがあります。
 欧州の他の国でもローカルなウースターソースタイプのソースは幾つもあるようです、ベジタリアンや「自然派食品」のジャンルでも独自のウスターソース類がカタログに載せられているのも見かけました。
    
 日本では明治時代から作られますが「西洋醤油」として日本化され、野菜エキスや発酵成分・アミノ酸を多く含む甘味やうま味をより効かせたタレとして独自の進歩を遂げました。
 濃度のあるとんかつソースや中農ソース、お好み焼きソース等も含め「ウスターソース類」とされます。ブルドックやオタフク、カゴメイカリなどの大手の他、「地ソース」ともいわれる地元中心で売られる中小メーカーのものも多くあります。
    
 現在の韓国では日本風とんかつ(돈까스と書くらしい)も人気のようで、日本製ウスターソース類も手に入り、デミグラス系も有りますが日本型ウスターソース類を作っている現地業者も有ります。(ソースは소스と書く)
 「オットゥギ 오뚜기」のソース類ではそれぞれ、とんかつソース、ステーキソース、ウスターソース胡麻とんかつソースのようです https://www.ottogi.co.kr/otgr/product/ProductList.jsp?page_no=2&proHCode=H00002&proMCode=M00012&proGubun=K&catGubun=K
「ロッテ」の缶詰とんかつソースhttps://www.lottefoods.co.kr/product/product_view.asp?seq=316&c1=B0000&c2=&c3=&ct=&schType=&schWord= や「ベックソル 백설」とんかつソースhttp://itempage3.auction.co.kr/DetailView.aspx?itemno=B235021191、紹介 http://bong988.tistory.com/entry/%EB%8F%88%EA%B9%8C%EC%8A%A4-%EC%86%8C%EC%8A%A4-%EC%B6%94%EC%B2%9C-%EB%B0%B1%EC%84%A4-%EB%8F%88%EC%B9%B4%EC%B8%A0-%ED%8A%B9%EC%A0%9C%EC%86%8C%EC%8A%A4 。他にも「チョンジョンウォン 청정원」 http://www.dongwonmall.com/product/detail.do?productId=000594751 (メーカーサイトはこちら http://www.chungjungone.com/brandstory/product/productList.do)。「ブグァン 부광」http://www.jangboja.com/shop/goods/goods_view.php?&goodsno=9110や、「ヘイン 해인」とんかつソース http://food-n.co.kr/goods/view?no=630、(中国製らしい)「チョンウ 청우」http://www.jangboja.com/shop/goods/goods_view.php?goodsno=7683&category=051012004、「スエプォン 쉐프원」 http://www.jangboja.com/shop/goods/goods_view.php?goodsno=7683&category=051012004も売られているようです。
       
 台湾では「烏酢」又は「烏醋」がウスターソースのことを指すらしいです。「工研 烏酢」http://www.kongyen.com.tw/ShopProd.asp?id=69というのが有り、日本では「台湾産 工研 台湾黒酢(中華風ウスターソース)」で売られています。
 「穀盛股份有限公司」の「醇香烏酢」「素食烏酢」もウスターソース http://www.kokumori.com/product02.htmlです。
 日本のウスターソースの影響でつくられたようです。
   
 ウスターソースは中国では上海で作られ、骨付き肉で作られることが多いとんかつ(炸面托排骨、炸猪排)につけて食べ、「辣醬油(喼汁/ソース)」と呼ばれています。「泰康」というブランドが有名で黄牌(イエローラベル)が特級品、蓝牌(ブルーラベル)が一級品だという事です http://item.yhd.com/item/2076750
 輸出ブランドらしい「《桂林牌》梅林辣醬油」https://tw.buy.yahoo.com/gdsale/%E6%A1%82%E6%9E%97%E7%89%8C-%E6%A2%85%E6%9E%97%E8%BE%A3%E9%86%AC%E6%B2%B9-296%E6%AF%AB%E5%8D%87-%E7%93%B6-1502058.html も有ります。
 香港などの他の地域でも販売され、中国料理の味付けや隠し味にも用いられるようです。
 【文史】辣酱油的本地化变迁史 http://www.shobserver.com/news/detail?id=2748によると1860年代にイギリスから入り、19世紀末から20世紀にかけひろまり、1930年には梅林缶詰食品有限会社(当時)が独自のウスターソースを生産します。日本のとんかつやウスターソースの歴史や文化と重なる部分も有り、何らかの影響も考えられます。
     
 ここに書いただけでなく韓国や台湾・中国にも他にもあるでしょうし他の国にもあるかもしれません。
 ウスターソース類の様なスパイス複合ソース・ドレッシングは世界の多くの国にあり、日本のウスターソース類が特別珍しい文化というものでは有りませんが、日本や中国でアジア化した欧米ソース類は食文化の変容として興味深いものです。トマトケチャップやマヨネーズの受容とも重なります。

 タイでもイギリスのリーペリンも多く、同じタイプと思しいタイ製の「Gy-Nguang」http://www.gy-nguang.com/もありますが、たこ焼きが人気でとんかつも有り日本式のウスターソースซอสวูสเตอร์やとんかつソースซอสทงคัตซึも作られ、こちら「GenYFood」https://www.genyfood.com/products.php?ref=do:read/cid:17/tid:56ではとんかつソースとお好み焼きソースと焼きそばソース、他にも「マルケン(○の中に賢)」など複数の現地生産者があるそうです「チェンマイ発信・飲んべえ親父のチェンマイ子育て物語  http://blog.goo.ne.jp/thaisyo1331/e/4a558f9078255168d6c32464061d244d」。
 日系企業「YAMAMORI」もとんかつソース、お好み焼きソース、タコ焼きソース、ウスターソースを販売しているようですhttp://www.yamamoritrading.com/list_seasoning.html
    
 インドネシアでは英国タイプを「kecapInggris ケチャップイングリス」といい(ケチャップという言葉は元は東南アジアで「ソース・たれ」を意味し、その言葉が欧米に伝わり、トマトケチャップというのはそこからアメリカで普及した調味料)「ABC」http://www.sukamart.com/id/food/cooking-baking/sauces/abc-kecap-inggris-195ml.html、「Asia」http://shopmrben.com/index.php?route=product/product&product_id=4021等、一部入っている日本タイプをウスターソースというらしいです。
 
 ブラジルではウスターソースは「MolhoIngles モーリョイングレス(イギリスのソースという意味)」ですが英国風の他にも日本型ウスターソース類も有ります。
 「Mariza」http://www.marizaalimentos.com.br/produtos/index.php?c=39 こちらのメーカにはなんと「Yakissoba」用のソースもあります、「Cepera」http://www.cepera.com.br/produto/molho-ingles-comum-pet-101-litro/、「Quero」こちらも日本型のウスターソースらしいです http://www.quero.com.br/temperos-condimentos/molho-ingles.htm、「Hammer」http://www.hemmer.com.br/molho-ingles-pet-150ml.html 、「Castrohttp://www.armazemcastelo.com.br/index.php?route=product/product&product_id=31 、「Pirata」http://www.vilma.com.br/produtos/molho-ingles-pirata/ 「Sabara」http://aepaa.pt/~a25794/wordpress/?attachment_id=48、「Qualita」http://www.paodeacucar.com.br/produto/116447/molho-ingles-qualita-150ml、「Dajuda」http://www.ciadagula.com.br/molho-ingles-d´ajuda/等多数の生産者がいます。
  
 南アフリカではマギーの作る「レーゼンビー」のウスターソース http://www.nestle.co.za/brands/food/maggilazenby

 オーストラリアだと「ホルブルックスhttp://www.harrisfarm.com.au/products/holbrook-worcestershire-sauce 、「ライオネル・ブランド」等。
    
 他にはオタフクが海外に進出しています、アメリhttp://www.otajoy.com/、中国の大多福食品(青島)有限公司 http://www.daduofu.com/ 現地化した独自のオタフクソ―ス類もあるようです。オタフクではソースを中国では「醤汁」としています。
 アメリカにはキッコーマンUSAのかつソース http://www.kikkomanusa.com/foodservice/products/products_fs_details.php?pf=20403&fam=204もあります。
 中国にはブルドックソース 富留得客(北京)商贸有限公司 https://www.bulldog.co.jp/cn/も。ブルドックではソースを中国語で「沙司」としています。

 リーペリンソースが世界では多く使われ、分類がどうなのかは知りませんが一説にはイギリスで9割、世界でも4割のシェアを占めているともいわれます。
 しかし日本型ウスターソースもそれなりに受け入れられおそらくその国独自の受容をもされています。日本人には「ちょっと違う」と感じる味になっているものもあるでしょう。
 ですが日本のウスターソースもイギリス型から独自の進化をしたものです、同じようにその国の味に合うように変化するのは面白いと思います。
 そこから何か新しい使い方や料理が生み出されるのかもしれないと考えると楽しみです。  
 お好み焼きはなかなか難しいそうですが串カツや日本型とんかつなどのフライものは世界でも通用するかもしれません、日本型のウスターソース類はまだまだ何らかの可能性を秘めているともいえるでしょう。
        
【参考】
「食の日韓論 八田靖史 三五館」
 http://www.amazon.co.jp/dp/4883206556
 
【関連記事】
>新・とんかつの誕生 
http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20150922/1442901832
   
>市販ソースの味を付けかえる〜「自ソース」のススメ
http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20151220/1450581163

「私」と「我々」と「あいつら」

 10人の人がいればその内5人はその10人の標準以下の能力しかなく、10人の内1人は他の9人より劣っている。
 100人に1人の愚か者は100人いれば1人いる。1,000人の内1人は1,000人に1人のバカだし10,000人に1人のバカは10,000人に1人いる。

 良く思っていない他所の集団の100,000人の内10,000人に1人のバカが10人いると自浄能力がないと思うし、100,000人の内1,000人に1人のバカが100人いるとバカの集団だと思うし100,000人の内100人に1人の愚か者が1,000人いるとその集団は腐っているから滅ぶべきだと思ったりする。
 
 自分たちの集団の100人に1人の愚か者は時々そんな人もいるだろうと思い、1,000人に1人のバカは例外だと思うし10,000人に1人のバカがいても自分には関係ない他人事だと思い易い。
    
 身内と思えない連中や敵だと思う集団、「私たち」や「我々」ではないと感じた「あいつら」に対しては愚か者を代表者だとか平均だとか思い易いし身内の不始末は例外だと思う。
 自分が「あいつらの仲間」だと思う愚か者を「あいつら」は仲間だと思っていないかもしれないし、自分が仲間だと思わない愚か者を他人はあなたの仲間だろうと思っていることもある。
 
 愚か者を排除できない「自浄能力のない連中」を批判している人が「誰か」があなたたちに近いだろうと言い出した愚か者をその人は「一緒にするな」と思う。 
 「優れた人」と自分の共通点を見つけ賛同や評価をすると自分も「優れた人」に近いと感じ、「駄目な人」と自分の違いを見つけ批判や糾弾をすると「駄目な人」と自分は遠いと感じる。
       
 共通点のある誰かに対する批判は「そんなことを批判する意味はない」か「(対立する側等の)他の奴らだってやっている」か「彼(ら)にそうさせた周囲にも責任がある」か「自分とは関係がない」「例外だ」等とするが、自分(たち)が含まれない場合はそんな意見にふれると「言い訳」だとかんじる。
   
 自分には党派性などなく派閥など組んでいないという人が「仲間」の成功を我が事と感じ、「仲間」への批判に自分に対する批判と受け取る。
 「独立した自由な個人の集まり」だといって仲間の間違いをわざわざ問題視しない人が仲間が「被害」を受けた場合には我が事のように憤る。
 自分と対立する側の人に同意する人は「取り巻き」「同調者」にみえるが自分に同意する人は妥当な意見だから一致しただけだと思う。

 上手くいっている場合は自分の仲間とし、都合の良い事を言えば自分の主張を強化すると感じる他者が間違った場合には簡単に切り捨て、もともと仲間でもなく特に共通点もないとする。
 「我々」とは違う「あいつら」に対し「自浄能力がない」という人が「あなたたちこそどうなのか」と問われると「彼(ら)は自分の仲間ではない」という。
  
 自分が共感し自分の正しさを証明できる範囲と自分を近いものと感じ、許せないもの認めがたいものは自分と遠いと思い易い。
    
 社会的な動物であるにんげんはそういう認知を普通に持っているのだろう。

戦前のお好み焼き

 現在では大阪名物ともされるコナモノ大衆食であるお好み焼きの歴史ははっきりとはわかっていません。
 ネット百科事典Wikipediaでも戦前についてはわかっていないとされますhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E5%A5%BD%E3%81%BF%E7%84%BC%E3%81%8D#.E6.AD.B4.E5.8F.B2.E6.A6.82.E7.95.A5
 他に「お好み焼ネット 第1回お好み焼き歴史探訪 http://www.okonomiyaki.to/library1.html」「お好み焼きの歴史 お好み焼き文明開化 オタフクソース http://www.otafuku.co.jp/laboratory/culture/history/his01.html
「 『神戸とお好み焼き』(三宅正弘)http://hietaro.kameo.jp/2015/04/post-960/」も。

 大正時代には既にあったとされる西日本に今もあるソース味の「一銭洋食」や「洋食焼き」又は「にくてん」などと呼ばれるクレープ状の小麦粉生地に具材をのせたものや、(明治時代に誕生したとされる)昭和初期の混ぜ焼きとのせ焼のある東京の「どんどん焼き」から派生したものとされます。現在ではクレープタイプは広島や神戸のものが知られます。
 昭和40年代には企業化と宣伝で大阪で名物とされ脚光を浴びますがその頃には既にいつ、なぜ「お好み焼き」と呼ばれるようになったかはわからなかったようです。
   
 戦前のお好み焼きの資料を見つけたのでここに挙げておきます。
      
 国立国会図書館デジタルコレクション「小資本開業案内 商店界編輯部 誠文堂新光社 昭和14年 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1262951/206?viewMode=」「お好み燒屋の開業案内」です。

 此の商賣は、もともと子供本位に子供洋食?、ドン/\燒きとして屋臺行商であつたものが(現今でも行商はやつてゐるが)店を構へ大人の客にお好みのものを勝手につくらせるか、またはそこの家の主婦なりがその燒臺の周圍に客を座らせ、いち/\客の好みに應じて手際よく燒いて進ぜる仕組を案出したものである。『商店界』誌上に之を紹介してからといふものは、こゝ三、四年のうちに全國花柳界を中心として、旺んに流行しだした新職業である。お客は大抵が青(下が月ではなく円)年男女で然も粋筋が多いから、場所は叙上の如く殆ど花柳界又は散歩地帯と限られてゐる。お好燒又の名をおたのしみ燒等と稱して看板を掲げて居る家もあるのはこの故である。

 次ページに「ウドン粉」ともあるので現在の「お好み焼き」につながるものなのは間違いないでしょう。具体的な形状はわかりません。
 子供向きの露店屋台のどんどん焼きを昭和初期位に店舗型の大人向きにしたものを「お好み焼」と呼んだとしています。「大人の客にお好みのものを勝手につくらせるか」「いち/\客の好みに應じて」焼くので「お好み」焼となったとみられます。
  
 他にメニューとして「オムレツ」「燒きソバ」「玉子燒」「玉子ソバ」「月見燒」「ビフテキ」「肉パン」「サンドウィッチ」「カツレツ」「あんこ燒」「牛フライ」「餅フライ」「シュウマイ」「ポテト野菜(草かんむりに采)」「よせ鍋」「どら燒」「てつぽう巻」「おしるこ」「イカフライ」「えびフライ」が挙げられています。
 現在では内容のわからないものも有りますが多様な軽食を出していたようです。  
 同一のメニューも多い昭和初期の東京のどんどん焼き屋については池波正太郎が多く書き残しているようです。山形や仙台、岩手、富山では現在も独自に発展したどんどん焼きが残っています。

 屋台や露店と行商形式の店が先行し、そのあと花柳界向けの店舗型の店が流行ったとしています。「こゝ三、四年」以前に『商店界』誌上で紹介したとあり、その内容を確認しないと正確な部分はわからない部分も有りますが、専門誌編集部の『商店界』が全国への「火付け役」「仕掛け人」だと自認しているようです。(『商店界』は1920〜1993にあった商店主や企業経営者向けの専門誌のようで発行者が初期は「商店界社」、のちに「誠文堂商店界社」、「誠文堂新光社」等と変わったらしい。「広告界」でもしられる)実際、「お好み焼き」類の全国への展開は昭和10年ごろから盛んになります。
   
【追記】「商店界」の該当記事は1935年(昭和10年)のおそらく12月号(15巻12号)の目次にある3ページの記事「〔斯んな商賣もある〕二百五十圓で出來るお座敷お好み焼 / 大畑甲子郎/p105〜107」だと思われます(〈注意〉リンク先では記事そのものは読めません)http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2250237/86?viewMode=。 

 昭和10年くらいには「お好み焼き」名称と業態が商店界編輯部と誠文堂新光社のある東京圏でも存在しました。昭和初期あたりに「お好み焼き」名称が成立したようです。
 「おたのしみ焼き」という言い方も有ったというのは興味深いです。同時代の重要な証言といえるでしょう。
        
 そして当時の「お好み焼き」の形状としてはこちらに記述が有ります。
 「台所に敗戦はなかった: 戦前・戦後をつなぐ日本食 魚柄 仁之助 青弓社 2015/8/7」の51ページの写真で見つけたのですが、検索するとネットでも挙げられていました。
      
 「昭和15年2月15日発行 節米料理と栄養パンの作方八十種(主婦乃友附録)」の「粉類を使ったご飯代り十五種 お好み焼き」です。http://www.ffml.com/OLD/setumai/1.html

 宅では日曜のお昼食など、こんなものを簡単に焼いて頂きますが、子供達は案外喜びます。
 挽肉が少しありましたら申分ありませんが、それに、葱、椎茸、春雨(微温湯に戻して)などを刻んで混ぜ、そこへメリケン粉を篩い込み、水を加へ、しやもじで
滴してみてたらたらと落ちるくらいの固さに手早く混ぜます。
 これを、よく灼けたフライ鍋に油を引いて平に流し入れ、ホットケーキのやうに焼き上げます。
 御飯代りですから、焼きたてに生姜醤油がしつくりします。

 現在のキャベツ入りではないタイプの「お好み焼き」ですが、この時代には小麦粉でまぜ焼きをするものを指して「お好み焼き」と東京でも認識されていたことが確実だといえます。ウスターソース類も使うものと使わないものが両立していた可能性が有ります、のせ焼とまぜ焼きの両方が有ったとも考えられます。
 最初はある意味ではより多彩な「お好み焼き」があったのでしょう。キャベツやソースが標準になったのはこの後だといえるかもしれません。
   
 明治の東京の下町で生まれたとされる「文字焼き」「もんじゃ焼き」から派生した「どんどん焼き」が昭和初期頃に「お好み焼き」になり、大阪や広島などの「お好み焼き」に育ったと考えられます。同じく「どんどん焼き」系の「洋食焼き」「一銭洋食」「にくてん」を取り込む形でつくられていったのでしょう。
 源流は江戸時代にはあった「麩の焼き」「助惣焼」などの菓子の製法からだと思われます。
   
 「お好み焼き」名称の昭和10年以前の存在と当時の理解、どんどん焼きとの関係、昭和15年ごろのまぜ焼きを確認しました。通説の裏付けになる戦後のキャベツとソースのまぜ焼きお好み焼きへのミッシングリンクの一つが見つかったといえるでしょう。
  
【追記】「「関西風」のルーツは東京だった! 花柳界と切り離せないお好み焼きの黎明期 澁川祐子http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38464?page=4 」に書かれていた昭和6年 柳田国男の「明治大正史・世相篇(明治大正史. 第4巻 世相篇 朝日新聞)」「第二章 食物の個人自由」「七 肉食の新日本式 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1160219/48?viewMode=」に

子供相手の擔ひ商ひの方でも飴や新粉の細工物は通りこして、御好み焼などゝいふ一品料理の眞似事が、現に東京だけでも数十人の専門家を生活させて居る。勿論衛生に非常に注意するといふが、彼等の言によれば材料は馬ださうである。小兒が路頭で馬を食ふ時代になつたのである。

があり「お好み焼き」の初出だとされます。昭和6年初頭の本ですから5年以前の存在が確認出来ます。内容はともかく「お好み焼き」名称は大正末から昭和初頭の成立が推定出来ます。

【追記2】大谷晃一の「続 大阪学 (1994)」の「庶民グルメの味 お好み焼き P33〜34」では(「お好み焼き大阪発祥説」をとる本ですが)実体験の記憶として昭和8年頃に水溶き小麦粉を薄く流し焼いた生地の上に干し桜エビ、ネギ、かつお節、青のりといった具材をのせ、その上にまた生地を薄くのせて裏返して焼きソースで食べる「洋食焼き」が有り、その後昭和14年頃に花街近くで卵えびイカ山芋牛肉キャベツ等も入る混ぜ焼きの分厚い「お好み焼き」が存在していたとしていてこの記事との整合性が有ると考えます。

【関連記事】
新・とんかつの誕生 http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20150922/1442901832

読書メモ抜粋その3

はてなブックマーク」に書いている「100字読書メモ」の一部、現在200冊強の簡易紹介です。
 飲食、酒造、歴史、刃物、銃刀、軍事等。
 最新>http://b.hatena.ne.jp/settu-jp/?url=http://www.amazon.co.jp/

うまいぞ!シカ肉―捕獲、解体、調理、販売まで

うまいぞ!シカ肉―捕獲、解体、調理、販売まで

害獣とされる鹿の肉を商材として利用するためのノウハウ。本格フランス料理のジビエの技法や熱処理から猟・解体や衛生管理、作業オペレーション、マネジメントの細かな手引書。ジビエ本として最良。素晴らしい 2012/07/04

独自の発展を遂げた中国酒の世界。発酵醸造の専門家が技術史を史料から読み解き、技法・成分等科学的な知見から全体像を描き出す。醸造酒の黄酒、蒸留酒の白酒の製法歴史を詳述。白酒の固体発酵には驚愕。古典 2012/07/12

近世東アジアの非対称な「外交秩序」から列強の強要による近代外交へ。乗り遅れた不幸な小王国。認識のずれとそれを利用する新興帝国日本と老大国清・列強。時代の流れに飲み込まれる人々。基礎知識が必要。良書 2012/07/25

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李氏朝鮮最後の国王高宗と妻閔妃と実父大院君。朱子学と因習に縛られ血で血を洗う宮廷闘争と腐敗した制度の中、優等生の王、聡明な妃、傑物の父がどの様に国を滅ぼしたのか。日清両帝国、列強の狭間で迷走。本格評伝 2012/07/26

つるつる物語―日本麺類誕生記

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戦争〈1〉中世戦争論の現在 (「もの」から見る日本史)

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銭貨―前近代日本の貨幣と国家 (「もの」から見る日本史)

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市販ソースの味を付けかえる〜「自ソース」のススメ

 日本のウスターソース類は明治の初めに持ち込まれたイギリスのウースターソース(ウースターは地名)から独自の調味料として発展したものです。
 粘度の低いウスターソース、粘度のある中濃ソース、濃厚ソース(とんかつソース)から焼きそば用、お好み焼き用、タコ焼き用など様々なタイプに派生し、現代日本の食文化の一部を担います。
     
 地域によって幾らか好みも違い、東日本ではブルドックソース、西日本ではカゴメソースやイカリソースが大手とされますが、関西では小規模な「地ソース」が多くあることも知られ、広島発のお好み焼き用のオタフクソースが全国でも人気を集め、他にも地元で愛される多彩なソースも有り、近年では地域振興の形で新しい味わいのソースも登場しています。個性的なおいしいソースをつくる生産者が多くあります。
   
 関東などでは中濃ソースが多いらしいですが、関西では地ソースを含めウスターソースととんかつソースの二種類を常備する家庭は珍しくはなく、他にお好み焼き用や「どろソース」なども組み合わせて使う人もいます。
 一方、地域によっては店に少数の大手のソースしか置いていないところも有り、おいしいソース、好みのソースがない、又は割高なので買いづらい、あまり使わないので色々試せないといったことも有るようです。
     
 ウスターソース類は醤油や塩、酢などとは違い、もともと複合調味料というべきものです、いくつもの素材の組み合わせ、ブレンドによって味を作り上げます。
 これを改造し、自分でオリジナルソースといえるものを作ったり、好みの味に作りなおしたりすることは十分に可能です。独自のブレンドを作る楽しみも有ってもよいでしょう。
 ウスターソース類もメーカーによって味が異なりますので下の分量は一つの目安としてお読みください。
     
 簡単なところから書きますが、例えばウスターソースだと半量から同割りまで、中濃ソースだと2割から6割位までのトマトケチャップを入れるととんかつソース風のソースが出来ます。最低限の調味料しか持たない方で2種類のソースはいらないという方はお試しください。お好みで少量の醤油や砂糖、酢、砂糖や水あめなどで調整しても良いでしょう。

 ウスターソース3割、とんかつソース3割、トマトケチャップ4割(又はウスターソース2.5割、中濃ソース2.5割、トマトケチャップ5割)に醤油と砂糖又は水あめか蜂蜜(好みでほんだしも)か3倍濃縮麺つゆ少々でお好み焼き又はたこ焼きソース風にもなります。
         
 安いソース等では塩辛いだけでコクやうま味が足りないと感じるものもあります。 
 塩気をまろやかにし、コクやうま味を増すは例えばトマトジュースの類を5%から10%ブレンドすると味がまろやかになります。野菜ミックスジュースやフルーツがブレンドされたものを足すと複雑な味や甘みを加える事が出来ます。より濃厚なコクが欲しい場合は煮詰めたジュースを用いても良いでしょう。1〜2割程度のトマトケチャップも有りです、勿論無塩のトマトペースト(濃縮タイプ)かトマトピューレでもかまいません。フルーツ100%ジュースも砂糖や水あめも利用できます、甘みを入れるだけでマイルドな深みが増します。
 トンカツソースの様な粘度のある濃厚ソースだとマヨネーズやラー油などの油脂を用いてコクを増すことも出来ます。辛子やマスタードを加えることも有ります。
     
 試してみてお好みに合うようなら濃度の近いものだと混ざりやすいのでボトルに直に追加成分を入れシェイクするだけなので簡単にできます。別に空ボトルを用意しておき、それをブレンド用に使う手も有ります。一度少量のソースで試してみてください。
     
 飲食店でもウスターソースと中濃やとんかつソース、ケチャップや醤油や辛子マスタード等をブレンドしその店の「オリジナルソース」を作るところも少なくは有りません。
 同じメーカーのもの同士の方が馴染みが良いともいわれますが、別々のメーカーのソースをブレンドすることも有りえます。
 それぞれの個性を理解し自分の好みに組み立てなおすのも面白いでしょう。
 素材やメニューごとに異なるソースを使う店も有ります。
 串カツ屋の浸けて食べるソースはブレンドしたソースなどを3分の1から半量位の出汁か水で割ったものを用いる店もあります。
   
 例えばウスターソース8に対し、とんかつソースが2にトマトケチャップ1、3倍濃縮の麺つゆが1で焼きそばや焼うどん用のソースにもなります。
 トンカツソースに濃縮麺つゆを加えたり、ウスターソースと濃縮麺つゆを煮立たせ(【追記】水で味を調え)澱粉等で固めにとろみをつけたものをお好み焼きやたこ焼きに用いる事も可能です。
 麺つゆだけではなく焼き肉のタレやポン酢やノンオイルドレッシングを入れても良いでしょう。

 家でカレーライスを作る場合に独自の隠し味を入れる方もいるでしょう。
 ソースもカレーのように隠し味をいれたりして目的にあった好みのソースにする事が出来ます。
   
 一般に市販のウスターソースは塩分が7〜10%、とんかつソースや中濃は少し塩分が弱く6%前後、焼きそば用は塩分7〜8%、お好み焼き用が5%強でたこ焼き用は5%弱で糖分も多くとんかつ用よりも甘いものが多いようです。ちなみに濃口醤油は14〜16%、淡口醤油で16〜18%、3倍濃縮麺つゆで10%前後。
 基本的に焼きそばお好みたこ焼き用はウスターやとんかつ・中濃よりも酸味が弱く風味成分が多く加えられているようです。
 
 ソース類の裏面などに書いてある原材料を見ると酢や野菜や果物かそのエキス、塩、砂糖、スパイスの他、カツオなどの魚貝や昆布などの風味素材、醤油やオイスター(牡蠣)ソースやアンチョビ、魚醤が含まれているものが有ります。つまりこれらの副材料を用いる事でそれぞれ独自のソースが作られている事がわかります。
 ですからこれらの成分を追加しオリジナルソースを作ったり好みの味に作り変える事が可能だという事です。ジュースや麺つゆなどの成分で補うのに問題は有りません。
 チャツネの類やペースト、ジャムなどを加えたり「ほんだし」や固形スープを煮溶かして混ぜたり、ニンニクや生姜、カレーパウダー、唐辛子や黒胡椒等のスパイスを足すことも出来ます。
 手間をかけるなら追加成分を入れ鍋で75度位まで加熱すれば味の馴染みが良くなります(加熱後はできれば鍋ごと急冷すると香りや風味、酸味が飛ばない)。
    
 少量のソースで実験し、上手くいったものを常備したり、目的にあわせその場でブレンドする事も出来ます。個人や家庭で好みのオリジナルソースを作れます
 追加成分で塩分や酸度が下がったものは冷蔵庫で保存し、早めに使い切る必要はあるかもしれません。
    
 イギリスの本家のウースターソースは隠し味に使う事が多いそうで日本のソースよりも味がきつく、そのままで掛けるのというのはそれほどないそうです。
 日本では洋食の焼き物や揚げ物に直に掛けるソースとして改変が行われ、米のご飯とも会うように甘みがつけられ、とろみのあるとんかつソースや中濃ソースがつくられ、洋食とは言い難い「コナモン」にも用いられるようになり独自の文化を作り上げました。
 とんかつソースはもしかするとウスターソースをデミグラスやブラウンソースに似せるような発想で作られたのではないかとも考えています。
    
 現在では多くの味わいを持つソースが作られています。
 料理に用いる際にも揚げ物焼き物炒め物粉物だけでなく色々な料理の隠し味や素材のマリネや漬物、煮物や時にはデザートにさえ用いる事が出来るとされます。
 自分でもウスターソースを出汁で薄めて少し甘みなどを足してあんかけ焼きそばの味付けに用いたり丼物のたれとして使う事が有ります。鶏肉やレバーのソース煮もビールのあてになります。
 ウスターソース類をベースにしたタレやソースや下味や隠し味に用いた味付けも多くあります。
   
 ソースメーカ―でも多様な利用を提案しています。
 ブルドックソース http://www.bulldog.co.jp/recipe/ 
 カゴメ http://www.kagome.co.jp/recipe/search/index.html
 オタフクソース https://www.otafuku.co.jp/recipe.php
 イカリソース http://www.ikari-s.co.jp/enjoy/
    
 書籍だと「ブルドックソースレシピ帖http://www.amazon.co.jp/dp/4103333413」「オタフク お好みソースレシピ集http://www.amazon.co.jp/dp/4806147478」があります。
     
ちなみにウスターソース類の定義とは何でしょう。
 農林水産省ではこちらhttp://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/kokuji/k0000102.html

次に掲げるものであつて、茶色又は茶黒色をした液体調味料をいう。
1野菜若しくは果実の搾汁、煮出汁、ピューレー又はこれらを濃縮したものに砂糖類(砂糖、糖みつ及び糖類をいう。以下同じ。)、食酢、食塩及び香辛料を加えて調製したもの
21にでん粉、調味料等を加えて調製したもの

次に掲げるもの以外のものを使用していないこと。
1野菜及び果実 2砂糖類 3はちみつ 4食酢(醸造酢に限る。) 5食塩 6香辛料 7調味料 8酒類 9でん粉

 規格においてはウスターソース、中濃ソース、濃厚(とんかつソースなど)は粘度による「濃度」の違いでしかありません。現実にはそれ以外に濃度と共に甘味やうま味成分などが多くなると認識されているでしょう。

 私見ですが現在のウスターソース類の規格としては幾らか時代遅れで、実際には多様な副材料の添加が行われ、多彩な利用が可能な多種類のウスターソース類が作られています。
 個人的には「うま味や風味のある液体に塩分、甘み、酸味とスパイスの風味をきかせた茶色か黒い調味料」です。粉末ソースもありますよね。
 合わせ調味料として和洋、一部は中華やその他の食文化の味をも取り入れた融通無碍な複合ソースとして独自の進化を遂げています。
 ステーキソースなどのウスター類から派生した複合調味料も有り、照り焼きのたれや甘酢との境目は曖昧になってきているのかもしれません。海外でもその地域で用いられる複合ソース類は有ります。

 味の構成としては野菜か果実のエキスを含んだ溶液や醤油を含めたアミノ酸液等に、ナツメグ、シナモン、クローブ、胡椒等のスパイス、生姜、玉葱、セロリなどの香味野菜に5%から25%程度の酢、砂糖などの甘味、塩分、そのほかの香味風味成分やカラメルなどを加えて加熱してつくられた物といえます。
 塩分、甘み、酸味、うま味、香味、風味を含んだ味わいで構成されます。
 濃厚で刺激があるのが特徴といえるでしょう。ポン酢と同じく三杯酢の延長線上の調味料かバリエーションと考える事も出来ます。
   
 もし飲食店などをされる場合にはどんなオリジナルソースが考えられるのでしょう。
 勿論、一から自家製でオリジナルソースを作ることは可能で研究すれば素晴らしい自家製ウスターソース類を作ることも出来ます。それは大変好ましいことです。
 しかし現実的には市販のソースを素材としてそこから独自のオリジナルソースに作り変える方が手軽ではあるでしょう。その方が割安になることも有ります。
    
 一つの考えとしては市販のソースの中から美味しい物、コンセプトに合うものを見つけ出し用いるという手が有ります。
 専門メーカーが工夫をして創り出したものなのですから高い品質でバランスが良く優れた商品が多くあります。一般には出回らない業務用ソースも有ります。
 ただ高品質なソースはそれなりに高額だったり手に入れにくい物も有り、メニューのコンセプトに合うとは限りません。手に入る手ごろな値段のソースを少し変えることでより目的に合うソースを作ることも可能です。
 よそでは味わえないオリジナルソースを持つ事がお客に訴求効果を持つとも考えられます。
    
 幾らか検討してみましょう。
        
 上で書いたような複数のソースをブレンドしたりケチャップや醤油、水あめや蜂蜜等の調味料を足すことも多くの店でされています。
   
 ワインなどにあわせるタイプの店で洋食系の料理に掛けるなら煮詰めた赤ワインでコクや風味を足すとよいでしょう。赤ワインはチリやオーストラリアなどの濃い味の物を用いると合うと思います。その際にベーコンの赤身の部分やマッシュルームを刻んで入れて煮込みうま味成分を出す「だしのもと」として用いたり、フォンドヴォ―やブイヨンを加えたり、粒黒胡椒を入れて煮詰めても良いでしょう。黒ビールでも面白いかもしれません。日本酒や紹興酒辺りも味をまろやかにするでしょう。
    
 米のご飯とも合わす洋食系の肉のカツレツの類には甘みを足したソースも合います。砂糖や水あめではなく蜂蜜やジャム、ママレードを入れる方法が簡単です。風味の強い黒砂糖などの粗糖だと少量で甘さを強く感じるのでクセが合う場合は有効です。
 果実ではイチゴやベリー類のジャムは難しいかもしれませんがリンゴやアプリコット、マンゴー、パパイヤ辺りだと合わせやすいでしょう。オレンジや柑橘系は特に華やかな風味が出ます。固形物が口にあたるかもしれないので物によっては濾した方が良いかもしれません。
 地ソースにはイチジクを入れた美味しいソースがあるのでイチジクも良いでしょう。

 市販のジャムだと甘みが強すぎると感じたり割高になったりすることも有りますので自分でフルーツもペーストやエキスを作り加えるのも良いでしょう。
 旬の時期に仕込んで置き、冷凍するなどして年中使う事が出来ます。イチジクやプルーンなどではドライフルーツを用いる事も可能です。デーツ(ナツメヤシの干物)もよく使われます。
 地域の産物の柿や柚子、ミカンやリンゴや梨を用い地元らしい味わいを演出する事が出来ます。他にはパイナップルも手ごろで合うでしょう。
 直ぐに使う場合を除いてすり潰すかミキサーにかけ加熱しておくのが基本です。素材を漬け込み味や香りを移してから濾すなどして取り除く方法も有ります。
   
 甘みのあるソースとしては「味噌カツソース」のような物も有ります。豚肉や鶏肉のフライに合うと思います。 
 これには二つのタイプの物があり一つはウスターソース類に味噌と甘みなどを足したもの、もう一つは味噌に甘みと酸味を足しスパイスなどもいれ酒や出汁で濃度を調整し、ソース風に仕立てたみそだれの様なものです。みそだれに隠し味的にウスターソース類を入れることも有るので境界線は曖昧ですが米のご飯にも合うものが出来ます。赤みそ等の塩辛いものは必ず砂糖や煮切り味醂など甘みを加えます。
 例えばウスターソース類に5%程度の石野味噌の白みそと原了郭の黒七味を加えた「京風ソース」といったものが考えられるでしょう。
 中国の甜麺醤、韓国のコチュジャン辺りも有ります。
 味噌系のソースだと練胡麻胡麻油を加えても良く合います。他のナッツ系の物もありでしょう、胡麻味噌ソースだけではなくピーナッツバター味噌ソースも美味しそうです。
 和風の香辛料、香味料の山椒や柚子、陳皮を入れても良く中華の八角や中国山椒・花椒、ときに五香粉やXO醤のような複合調味料を入れてエキゾチックに仕上げても面白いでしょう。地方色のあるかんずりや柚子胡椒なども使えます。
      
 コンセプトによっては酒粕や納豆などを用いた「変わりソース」も考えられます。
    
 ウスターソース類はスパイスやハーブを用いるのも特徴です。ナツメグ、シナモン、クローブフェンネルオールスパイス、クミン、カルダモン、胡椒、唐辛子、タイム、ローリエ、ニンニク、山椒、ニンニク、生姜等です。これにターメリックを入れるとカレーになります。好みのスパイスを加えて香味を強化しても良いでしょう。少量だとカレーパウダーを入れても良いでしょうし同じくブレンドされたガラムマサラ(メーカーによって味は異なる)を入れるのも簡単です、ブレンドのシーズニングスパイスやタバスコやチリなどのスパイスソースを利用する手も有りでしょう。
 スパイスは品質で香りも味も異なるので良い物だとグレードが上がります。加熱によっても香りが変わります。
 
 同じく香り成分としては柑橘類の皮の砂糖漬けのピールが有ります。レモンピールやオレンジピール、柚子ピールのほか多くの柑橘の皮の精油成分を用いるものが有ります。市販品も有りますが自作も出来るでしょう。
 お苦手な方もいるでしょうが人工の香料、エッセンス、フレーバーやオイルを利用する手も有ります。レモン、オレンジなどの柑橘系だけではなく、パイナップル、アプリコット、リンゴ、梅、アーモンドやチョコレート、乳製品まで多くの香料が製造販売されています。ほんの少し加えるだけで複雑な香味が作れます。
 健康に良いとは言えないそうですが燻製の香り、スモークフレーバーも有効でしょう。玉葱やニンニクなどの素材をきつめにローストして加えロースト香をつけることも出来ます。
 
 味覚においては香りの役割は大変重要です。
  
 うま味・風味成分の追加の仕方も有ります。
 普通のウスターやとんかつ、中濃にも昆布やカツオなどの出汁・魚介エキス、チキンポークビーフなどの肉エキス・スープ、魚醤やアンチョビやオイスターソース・エキスなどのうま味・風味成分が含まれている物も有りますが、タコ焼きやお好み焼き、特に焼きそば用のソースには複雑なうまみ・風味があるソースが有効です。
 例えば(塩分の調整は必要ですが)イカやアミの塩辛や蝦醤の様な魚介の発酵素材を用いたり業務用などで市販されている牡蠣エキスやイカ墨(要加熱)なども利用出来るでしょう。塩麹などの麹のエキスやマーマイやべジマイトあたりも面白いかもしれません。
 干し椎茸の出汁も良く会います、他に乾物だと干し貝柱や干し海老、煮干、鯖・鯵・飛魚なども。
 昆布茶や場合によってはうま味調味料やスープの素やだしの素・出汁醤油を添加する手もありです。
  
 酸味も米酢、穀物酢から黒酢なども有り、ワインビネガーやバルサミコ、リンゴ酢や柿酢なども利用できます。梅酒の漬け梅や塩気のある素材ですが梅干しや梅酢を上手く隠し味で使う考えも有ります。レモン、柚子、スダチ、グレープフルーツ、シークヮーサーなどの柑橘系の果汁も利用できます。
 酸味にも酢酸だけでなくクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、うま味成分でもあるコハク酸、場合によっては乳酸なども有ります。ヨーグルトや乳清も上手く使えば面白いかもしれません。
 ウスターソース類で使われるものとしては南方の果実タマリンドが有ります。果実やペーストや粉末で酸味をつけたりとろみをつける成分としても用いられます。
    
 食感・とろみを与える素材も野菜などの素材の細かな固形物からコーンスターチなどの穀物成分、海藻や果実などから取られた増粘多糖類などが有ります。水あめやゼラチンもその意味もあるでしょう。 
 ときどき見かけるキサンタンガムというのはでんぷんを菌で発酵させて作る食材で普通に使う限りヒトには何の問題も無い「発酵食品」です。グアーガムは食用豆の成分です。
 粘度によりテクスチャーや調味料の絡みつきによる味ののり方に影響を与えます。
   
 色については加熱した食品の成分から時間をかけ発色するメイラード効果の利用の他、砂糖を焦がしたカラメルで色付けすることも有ります。
 自作でカラメルを作る以外に市販のカラメルも有り、簡単に深い色合いを出す事が出来ます。濃口醤油だけではなくタマリ醤油や再仕込み醤油も使えるでしょう。
 市販のイカ墨ペーストを加熱していれたり黒ごまペースト(練胡麻)でも色が付きます。
    
 これらの素材を別にブレンドして作り置きして、隠し味用の「秘伝タレ」にしてソースとブレンドし、オリジナルソースを作れます。
 目的にあわせ味覚を設計し、自分の味を創り出す事もできるでしょう。
 味覚理論は科学に近い側面もあります。勉強し、工夫する余地があります。
         
 実際、味付け・調味には基本的なパターンが有り、塩分と甘み、風味や酸味やうま味など、素材にあわせたいわば「方程式」的な部分が有ります。味付けや素材について理解すれば「こんな味にしたい」とのイメージから味を計算するのはある程度可能です。マンガなどにある「一度食べた味を再現できる」というのはある程度は事実です。
 ご自分のイメージや理想から品質の良い素材をシンプル組み合わせて味を創るか、多くの味を積み重ねて複雑な味を創るか、食材の持ち味を生かすようにするか、ソースの味で食べさせるか、メリハリを出すか、バランスを重視するか、コストパフォーマンスを目指すか、個性を出すか出さないかいろいろ考えて試してください。
 複数のソースを料理にあわせて使うのも面白いかもしれません。
     
 ここで一つ「ネットでおそらく一番簡単で安い」自家製ウスターソースのレシピ案を書いておきます。
 これをベースにしてもオリジナルソースが出来る筈です、上の内容を参考にお好みに改造してください。

仕上がり約1リットルで
1) トマト野菜ミックスジュース(無塩)900cc、りんご200g、玉葱200g、生姜30g、固形物はすりおろすか、粗く刻みジュースと共にミキサーにかけどろどろにする。
2)昆布5g、頭と内臓を取った煮干20g(これらのかわりにほんだし15g又はコンソメの素10g程度を加え、それが無塩でない場合は塩を5g減らす)と鍋に入れ、中火位で7割量(−30%)まで煮詰める。(アクを取り、焦がさない様に)
3) ガラムマサラ10〜20gをいれ10分ほど弱火で煮る、濃口醤油120cc、塩60g、砂糖60g(お好みでうま味調味料5gも)を入れ沸いたところで火を止める。
4)冷ましてから1日程度置き、ガーゼかさらしなどで濾し搾る(ザルなどで濾すと中濃風)、酢100ccを加える。長期保存する場合は瓶に入れてから70度の湯で30分湯煎に掛ける。
 冷蔵庫で10日ぐらい寝かせると味が馴染んでくる。

 搾りかすの煮干と昆布はそのままで惣菜にもでき、その他の成分はカレーの隠し味に使えます。
 野菜ジュースが150円から250円、リンゴ玉葱はどちらも約小1個分になるので生姜も併せて200円程度から、出汁が50円から、醤油塩砂糖酢は合わせて100円くらいから、ガラムマサラも安いものなら100円くらいからですが銘柄によってブレンドも違い味を見てお好みで唐辛子や胡椒を足しても良いでしょう*1。全部で600円から1000円程度で作れます。材料により味が変わるので出来上がりをみてからでもお好みに調整してください。 
 ネットや本等で調べると他にも自家製ソースのレシピは多く有ります(より完成度は高いが高コストの物が多い)。
   
【追記】ついでに朝岡のウスターソース用スパイスセット http://www.asaokaspice.co.jp/spice/library/520867.html も書いときます。
   
【関連』
>世界のウスターソース
http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20160614/1465887807

*1:【追記】香りが弱い場合はオールスパイスを足すのもあり。

読書メモ抜粋その2

 「はてなブックマーク」に書いている「100字読書メモ」の一部、現在200冊強の簡易紹介です。
 飲食、酒造、歴史、刃物、銃刀、軍事等。
 最新>http://b.hatena.ne.jp/settu-jp/?url=http://www.amazon.co.jp/

膨大な資料を基にナチスとBD農法等との関りを描きだす。タイトルは少し大袈裟で有機農業の関係はそれ程深くない。寧ろ俗流ダーウィニズムと生態系論、民族・浪漫主義の受け皿としての「科学主義的呪術思考」の問題か 2011/10/22

お米と食の近代史 (歴史文化ライブラリー)

お米と食の近代史 (歴史文化ライブラリー)

明治維新から戦前の統制経済前夜までの米と「主食」の近代史。生産から流通・販売や政府・国民の意識までが示される。米の輸入や輸出まで植民地経営や国際経済についても面白い。資料価値が高い本。2011/10/28

中華料理の文化史 (ちくま新書)

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本国の中華料理の変遷を文献資料から描き出す。主食の変化、肉の嗜好の交代、調理法素材味付けの時代ごとの変化はとても興味深い、炒め物箸鱶鰭等。幾らか古いのと用語に疑問があるが改定完全版を期待したい良書 2011/10/30
(文庫化されたhttp://www.amazon.co.jp/dp/4480430695)

エトルリア人―ローマの先住民族起源・文明・言語 (文庫クセジュ)

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現時点でのエトルスキ(エトルリア人)研究の成果。古代ローマに先立ち北イタリアで栄えローマに影響を与えローマに飲み込まれた謎の民。発掘資料や文献から実態に迫る。先史時代から滅亡まで。よく纏まった良書 2011/12/08

ローマ帝国一五〇〇年史 (ビジュアル選書)

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ローマ帝国の政治史をその「事件」を描いた絵画(後世の物が多い)と共に紹介する。駆け足で各項目の記述は少ない物の現代の学問的な歴史から見たまともな記事が多く例の「物語」より上等。大ポンペイウスも詳述 2011/12/11

ヌードルの文化史

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スイス人ライターが書いた麺類の薀蓄本。世界の麺類の歴史について農業から文化まで語る。情報はあるが視点がヨーロッパに偏っている点と感傷的尚且つオリエンタリズム的な文章が気になる/紀行文に近い 2012/02/25

パスタの歴史

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主にイタリアの「パスタ」を中心とした麺類史。地中海世界小麦文化のパンに次ぐ大きな流れとし農業技術文化の歴史を詳述。一応東亜の麺にもふれられるが物足りないかも。「麺の文化史」等と読み合わせるべき/悪文 2012/02/25

大阪食文化大全

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近世近代の大阪の食文化史の概観を描く。料亭・割烹の流れや市場・流通史、名産品・地域野菜等の広い範囲についての面白い研究成果。根拠の示されたのも多いが幾らかまだ「証言・推測」レベルの物も有る 2012/03/02

ポル・ポト〈革命〉史―虐殺と破壊の四年間 (講談社選書メチエ 305)

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カンボジアと長くかかわる記者の書いた「怖い本」。場当たり的な指導層と米国越南中国が争い駆け引きを行う国際情勢の間でナイーブで無責任で「幼い」活動家に政権が転がり込む。混沌と死に飲み込まれる社会 2012/05/24

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稲や麦、玉蜀黍やじゃが芋甘藷からソルガム、大豆や野菜類、林檎葡萄からバラにいたるまで多くの農作物の品種改良の歴史を書いた大著。驚くべき工夫の歴史。夫々の書き手が異なる為書き様も様々でおかしな記述もある 2012/06/08

金・銀・銅の日本史 (岩波新書)

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材料工学の研究者で考古学史料・伝世品の金属研究の第一人者による新しい貴金属史。金属組成冶金鉱業製法技術の根拠の裏付けから明らかにされる驚くべき技巧。幾らか説明不足に感じるが新書だから仕方ないか。良い本 2012/06/24

武器の歴史 大図鑑

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英王立武器博物館の膨大なコレクションから古今東西の手持ち武器の歴史を描き出す。貴重な写真が多く素晴らしい。近代初期の幻の銃器の数々。惜しまれるのは解説が少ない、幾つか変な訳、欧米中心史観。2012/06/27