アサルトライフルの話です。
1月に米国・ラスベガスで行われた世界最大の銃器ショーSHOT Show 2011 でコルトの新型アサルトライフルシステムColt LE901システム（市販品はSP 901で官用品はCM 901か？）が発表されました。基本的にはガスピストン化したオペレーションメカニズムと拡張性の高い共通のロアフレームとモノリシックアッパーレシーバーで7.62mm×51（.308)と5.56mm×45(.223)を共用しバレル長などのバリエーションを組み合わせる「効率的」なシステムだそうです。
オプションでダイレクト・インピンジメント方式のガス・オペレーション・システム（所謂リュングマン方式）も選べるようです。 ⇒画像
何というか…「今更」感の拭えないAR/M4のスケールアップ版です。
AR/M4を原型に7.62mm×51のAR-10サイズに拡大し、それにコンバージョンキットの5.56mm×45を組み込めるようにした物の様です。
デザインもほぼAR/M4を引き継いでいます。なぜかチャージングハンドルも今時主流のボルト直結型ではなく不便とされる引張りのみの操作しにくい物を引き継ぎ、ボルトキャリアもリコイルスプリングもレシーバー後部につき出す折り畳みの出来ない嵩張る形式をそのままにしています。当然のようにボルトフォワードアシストも付いています。
FN SCARやRemington ACRの改善点を取り込んではいません。ほぼAR/M4と変わりません。
一番意味が分からないのは「売り」の共用システムです。大型の7.62mmで「大は小を兼ねる」との思想ですが、ベースが削り出しのアルミ合金のアッパー・レシーバーとガスピストンが付くAR-10なのですからどう考えても基本的に4kg強にはなります。
http://militarytimes.com/blogs/gearscout/2011/01/20/colts-sp901-will-soon-be-available-for-purchase/
によると9.4 pounds = 4.26376828 キログラムと有ります。ヘタをすると5.56mmバージョンでも3.8kg以上にもなります。
SCAR-H（ヘビー）に5.56mmコンバージョンキットでも開発して付けたほうが軽くなるでしょう。
7.62mmならともかく5.56mmだと重すぎます。共用する意味はありません。軽量化にも限界はあります。
ポリマーを多用するSCARだと7.62mmのヘビーで3.6kg、5.56mmのライトだと3.3kg程度です（M4A1タイプは3.5kg程度）。
大型のレシーバーに小型の弾薬を使用しる場合には無駄な隙間もでき、下手にかさばり使用感も良いようには見えません。
アダプターやカバー等が必要になり部品数も増えるでしょう。
それと問題は価格でしょう現在のM4A1は官需価格は約1000ドルとされている様です。高額であるとされるSCARやACR*1が納入されれば2000ドル前後とも考えられます*2。901システムはスタンダードモデルも1500ドルまでで納品できない限り割高に感じられます。
余程軽量かつ安価に作らない限りむしろ実用性に乏しく使用において複雑になるように思えます。
下手に共有部品が多いと軍用としては兵站が混乱するかもしれません。
何のための新製品か理解できません。現在のAR/M4のカスタムパーツがそのまま使えることも売りなのでしょうが中途半端な「ハズレ」モデルになる気がします。昔のColt SSR（ステンレススチールピストル）の二の舞でしょう。
政治力やブランド力でなんとかなるのでしょうか。
現実には今のAR/M4シリーズが暫くそのまま制式ライフルの座を守り続けるのでしょうから問題はないのでしょうが訳の分からない新製品です。
アメリカでのスポーツライフルの場合はロアレシーバーが本体とされ所持許可も一つのロアレシーバの登録で幾つかのアッパーレシーバーの組み換えが認められるのでその市場を狙う商品としてはあり得るのかもしれません。
現行のM4A1やM16A4の改良型としてM4A2やM16A5等と称して押し込むことを考えているのでしょうか。
同様の展開も可能な他社の7.62mmのAR/M4シリーズとの競合になる商品としてはブランド力のあるColtとしては勝機があると考えているのでしょうか。
「一応作っただけ」で実際に販売されるのかはわかりませんから唯の「コンセプトモデル」で終わるのかしれませんが…。
〔追記〕追加記事を書きました。「COLT LE901の続き(雑談・動画あり）」
http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20120119/1326952581
