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リテラシーと理解について考える

スポーツハンティング用ボルトアクションライフルの動向(アメリカ中心)

 元々拳銃を中心としたミリタリー系自動銃に嗜好が偏っていたのですが、前に「猟銃の威力と用途 http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20121106/1352137599」を書き、それまであまり知識のなかった狩猟用ライフルに興味がわき調べてみました。まだまだ不備はありますがメモのつもりで。(リンク先はメーカーの都合等による変更,、リンク切れ、終売も有ります。ご注意ください)
      
 ボルトアクションライフルは19世紀Johann Nicolaus von Dreyse ドライゼによって開発された後装銃の手動式銃尾閉鎖機関で、後に金属薬莢の完成で(最初は紙薬莢だった)近代小銃に画期をもたらし戦争の形を大きく変えた「歴史を動かした」兵器です。
 銃身の後部を閂(かんぬき)型のボルトという部品を前後させ開閉し基本的には回転によってロッキングラグという突起で閉鎖します。ボルトを後ろに引き下げることで薬室を解放、薬莢を排莢しボルトを前に戻すプロセスで装填し発火装置のバネを圧縮、再び閉鎖し発射が可能になります。
 威力の強い弾丸を安全に自然な操作で比較的自由な射撃姿勢で撃て、高精度だという利点があります。初期には単発でしたが後に連発式も開発されます。
               
 軍用銃としては19世紀末にドイツで開発されたMauser モーゼル(マウザー)M98(Gewehr 98、Gew 98等ともいう)によって完成をみます。他にも幾らか傾向の異なる英国のLee-Enfield リー・エンフィールド、ロシアのMosin-Nagant モシン・ナガンや米国SpringfieldM スプリングフィールド1903や日本の三八式歩兵銃等も同世代のライフルといえるでしょう。
 ボルトアクションライフルはアメリカを除く全ての国で第二次世界大戦までは軍用として主力の銃でした。モーゼルM98も短小型Kar98k(Karabiner 98 Kurz)として使用されます。
     
 狩猟等で用いられるボルトアクションライフルは元々民間生産の物も有りましたが少なくはない数の軍用銃の払い下げや民間への販売・転用から一般化した側面もあるでしょう。
 現在でも世界の多くの国では大変丈夫なそれらの銃のその銃床(ストック)等外装を換装したものが狩猟用などとしても現役で使われ、モーゼルM98の機関部は現在でも「モーゼルアクション」として主に狩猟用の銃として作られ続けていますhttps://www.mauser.com/produkte/m98/。ロテイティング又はターンボルトタイプといいボルト先端の180度に配置された2つの大型のロッキングラグを約90度回転させ確実に閉鎖します。
   
 一方銃器メーカーは民間用により狩猟に適応したボルトアクションライフルを開発してもいます。元々民需も多くありましたが特に第一次世界大戦後大戦時に生産を拡大した反動で軍用銃は在庫が過剰、生産設備も余剰となった銃器メーカーはよりデザインや品質の優れた民間用の銃を売らなければ厳しい状況であったのかもしれません。
 階級的な社会が続いた欧州に対し比較的に早い段階から大衆消費社会に向かったアメリカで「商品」として頭角を現したのが1936年に生産が開始された既にアメリカでトップクラスのメーカーであった Winchester ウィンチェスター社のModel 70です。
ウィンチェスターM(モデル)70もメカニズムとしては基本的に「モーゼルアクション」のバリエーションですが軍用銃とは幾らか異なり高い信頼性と共に優れた命中精度、心地良くスムーズな操作性、より高い安全性、デザインの良さを兼ね合わせた当時としても大変優れたスポーツライフルです。
      
 M70は現在でも標準的な一つの銃の設計で用途にあわせ小口径弾から大口径マグナム弾までサイズを多様に取り揃える商業ライフルです。
 ○○(銃の名前)の威力又は射程距離はどうかという問いを見ることががありますが正式弾のある軍用と違いスポーツライフルについてはそれだけでは答えようがない場合もあります。一般に同じモデルでも口径等仕様の異なるバージョンが有ります。それぞれの銃弾の威力等は上記の「猟銃の威力と用途」の記事を参考に。
      
 アメリカのライフル市場において品質の高さにより絶対的な評価を得、ウィンチェスターM70は大きな成功をおさめます。現在でも伝説的な名銃とされます。
 第二次大戦後にもアメリカ軍の狙撃銃としても採用されたという事で工作の手間のかかるM70は一時は生産が追いつかずレミントン等他社でも生産が行われたそうです。
    
  Remington レミントン社も重要な銃器メーカーでもありましたが名銃ウィンチェスターM70の名声のもと自社製品のボルトアクションライフルの販売は伸び悩んでいたようです。その状況でのウィンチェスターM70の生産は精度の高いボルトアクションライフルの製造ノウハウを学ぶチャンスであったといわれます。

 1962年レミントン社はModel 700を発売します。(700という数字はM70の印象に被らせたのかもしれません)
 M(モデル)700はモーゼル系でもより新しいデザインを取り入れ、ウィンチェスターM70に比べ安価で簡略化された製造方式を用いながらも充分な高品質で命中精度は寧ろ凌駕し、ベストセラーになります。
 鋼鉄インゴットからの切削加工が多く職人技に頼らざるを得ない古い設計で生産コストが高いウィンチェスターM70は岐路を迎えます。
       
 1964年ウィンチェスターは重要な経営判断を実行します。
 M70を新設計の生産効率の高い新型に全面的にモデルチェンジし「新M70」として売り出したのです。
 既に旧設計から30年の時代が過ぎ、職人的な手業と手間のかかる製法で価格的な問題が出る状況においてはあり得る判断だったのかもしれません。
           
 しかしこれが裏目に出ます。
 高級イメージで評価を得ていたM70だからこそ新M70に対しては大きな落胆の声が市場から浴びせられます。
 しかも初期の新M70は品質に問題が有り精度も落ち、造作も目に見えて安づくりで消費者の多くからも背を向けられます。
 多くの在庫を抱え職人を減らしていたウィンチェスターは新M70を売り続けるしかなかったようです。
 ユーザーは旧M70を Pre-'64、新M70をPost-'64と呼び市場在庫品や中古品であってもPre-'64を求める状況になります。
 ウィンチェスターは経営を傾かせついには身売りをも余儀なくされます。
      
 現在のアメリカ狩猟ライフル市場でもレミントンM700は「王者」として君臨しています。
 標準的な価格の一般の量産ライフルとしては市販品そのまま(out of the box)での命中精度が高く通常必要とされる信頼性はありデザインも良く操作性にも優れます。多くの口径の銃が作られ多様なデザイン・価格の物がカタログに載せられています。
 そしてもう一つ大きいメリットとしては長年にわたる市場での優位を背景に専用のパーツやアクセサリー類が市場に豊富に存在し、アフターマーケットといわれるDIY(自分で改良する)的な用途やカスタマイズの部品も多くあり、銃の整備改造工・ガンスミスにも多くの技術が蓄積されてもいます、チューンナップが比較的に容易だといえるそうです。
   
 M700についての批判としては古典的なモーゼルアクションとは異なるC型等といわれる華奢なスプリング形状のエキストラクターとプランジャータイプのエジェクター、一点溶接ボルトハンドル(稀に取れるらしい)等が語られますが氷結や低温脆化の起きる可能性のある寒冷地等でのデンジャラスゲーム(獲物に反撃される可能性のある猟)でなければ特に問題が有るとは言えないでしょう。明らかな欠点ならここまで売れることは有りません。
 実際M700シリーズは現在でも日米を含む多くの国で軍用の狙撃銃としても採用されています。
 そして既にパテントが切れている為に他の多くの狙撃銃を含む精密射撃用ライフルメーカーによって(独自の改良を加えられ事も多いが)コピー生産されています。
 アメリカではスポーツライフルのプラットホーム(標準)として扱われているといえます。レミントンM700シリーズはアメリカでは新品が大体$700位〜で販売されているようです。
 http://www.remington.com/product-families/firearms/centerfire-families/bolt-action-model-700.aspx
 ModelSevenはM700の軽量版でModel 770/710は3ラグの新設計ですがM700のいわば発展型廉価バージョンに近い。
       
 長年レミントンM700に次ぐシェアを持っていたのはSturm,Ruger スターム・ルガー社のM77シリーズです(現行型はHawkeye ホークアイ)。 
 ルガー社は第二次大戦後に生まれた比較的新しいメーカーです。
    
 ウィンチェスターM70Post-'64やレミントンM700がコストの上昇に対し新設計による鋼材からの切削工程の簡略化やプレス部品の多用という手段で対応したのに対しルガーでは異なったアプローチをします。インベストメントキャスト又はロストワックスという鋼を大まかな形まで鋳造し、そこから切削加工を行うという設備投資のかかる新しい技術の導入です。
 旧来の鋼材の70%もの部分を削りかすとして部品になるのは残りの30%程度という方法から見れば大変効率的に作られます。複雑な形状の「モーゼルアクション」タイプの部品を比較的低コストながら高い精度と充分な強度を持たせ作る事が出来ます。
    
 初期型の「マーク1」はモーゼルアクションを原型に現在標準的なスプリングタイプで排莢が容易なプランジャータイプのエジェクターを取り入れた物でしたが「マーク2」では故障しにくい単純なブレードタイプのメカニカルエジェクター(モーゼルやM70Pre-'64と同じ)になり引き金も簡略化されました。現行型のホークアイでは引き金が高品質な物に改善されたようです。*1
     
 命中精度は狩猟用には充分ながら精密射撃用としてはそれほど優れているとはいえないようですが、モーゼルアクションやM70Pre-'64と同じクロータイプ(爪型)の大型エキストラクターを備え、全体的に耐久性に優れ故障や破損が少なくマグナム弾用やデンジャラスゲーム等でも絶大な信頼を得ています。ホークアイシリーズはアメリカで現在市場価格が$750位〜のようです。
 http://ruger.com/products/Hawkeye/overview.html
    
 近年台頭してきたのはSavage サベージ社です。Model 10/110シリーズとしてModel 11/111やModel 12、Model 16/116といった基本設計の同じ一連のライフルを主に生産しています。
 サベージ社は1894年から続く老舗ですが長年二流品メーカーの位置にありました。
           
 サベージM110シリーズも基は1958年に開発されました。ウィンチェスターM70Post-'64やレミントンM700より古いといえます。
 サベージ社では他のメーカーとは異なる簡略化を行います。
 モーゼル系のボルトアクションはボルトヘッドとボルト全体が一体の削りだしの堅牢な造りなのが通常でしたがサベージはボルトヘッドとボルト、ボルトハンドル等を最初から別に作り機械的に連結させるセパレーツタイプのボルトです。内爪型小型エキストラクター。
 デザイン的には構造上は一体型に負けない充分な耐久性を持ち「フローティング・ボルトヘッド」は理論上精度に優れ「フロントバッフル」機構は安全性に勝ります。銃身の交換も容易です。
 このデザインは嗜好品でもあるスポーツハンティングライフルとしては「安っぽい」という印象もあります。他にも全体的には「安物」的な造作で二級品として扱われてきました。
         
 1980年代末には一度破産します。そこから再建が始まり総合銃器メーカーからボルトアクション中心に方向性を切り替え、消費者のニーズを積極的に取り入れ90年代には「安くても良い製品」を作るメーカーとされるようになります。
 銃身の品質が向上したようです。その後2003年には懸案であった引き金の改良をAccu アキュ Triggerというグロックピストル風の安全機構付を取り入れ成功し、2009年には命中精度に大きな影響を与えるベディング(アクションの銃床・ストックへの「寝かせ」)に大きな改善を加え現在では安価ながら一般の標準的なout of the boxの量産既製品ではレミントンM700を超え最高の命中精度があるとされます。sub-MOA(100ヤードで1インチ以下の集弾)保証がされているということです。
             
 アメリカでも趣味的な狩猟ではなく所謂「害獣駆除」的な生活必需品のハンティングライフルを必要とする地域やライフスタイルの人達もいます。廉くて良い商品は売れます。
 今でも「安っぽさ」は有りますが「実用品」としてのボルトアクションライフルとしては最善の物の一つとされます。アメリカではM110シリーズが小売りで$500代から入手が可能だそうです。
 http://www.savagearms.com/firearms/allfirearms/
      
 サベージは近年では大手の一角に食い込み勢いは止まらないようです。それに対しレミントンではModel 783 (2ラグ)http://www.remington.com/product-families/firearms/centerfire-families/bolt-action-model-783.aspx、ルガーではAmerican Rimfire (3ラグ、ファットボルト) http://ruger.com/products/americanRifle/overview.htmlというM10/110シリーズを真似た$400程度からの安価な商品を投入して反攻しましたがサベージもより安価な$300代からのAXISシリーズで対抗しています。
       
 Browning ブローニング(ブラウニング)社は元々は主としてはベルギーFN(FabriqueNationale ファブリック・ナショナル)社の製品をアメリカで販売していました。それが1970年代にはオリジナルのボルトアクションライフルの販売を始めたようです。
        
 ブローニングBBRというモデルです。これもセパレーツ型で別部品のボルトヘッドを持つの新しいデザインのライフルですがレイアウトとしてはサベージのような2ラグのモーゼルタイプではなく(後述する)ウェザビー MarkVと同様(ウェザビーはワンピース型ですが)な小型のロッキングラグが120度3列3個ずつ計9個並ぶデザインです。
 BBRは1984年には生産が終わり、代わりにブローニングA-Boltという別部品のボルトヘッドで大型のロッキングラグが3個120度の位置に並ぶデザインのモデルに変わります。A-Boltは無印から2とAB3まで発展します。ファット(Fat)ボルトといわれる太めのボルト本体です。ロッキングラグの入る溝を後部からシールする安全性の高いデザインです。A-Boltと同じレイアウトは最新のスナイパーライフルでもよく使われAccuracyInternational アキュラシーインタナショナル等でも使われました。
 そして最新型としてブローニングX-Boltというモデルが現在の主力です。機関部はA-Boltとほぼ同じレイアウトですがボルトヘッドがボルトと一体風になり格好の良い(ハンドルは別部品)スマートなボルトに変わりました。いずれもプランジャー型のエジェクター、小型の外爪エキストラクターです。
                    
 新しいメカニズムを取り入れるのが早いのですが逆に絶対的な定番のモデルが無いとも言えます。品質が充分に良く見た目もスマートなのが「売り」なのでしょう。
 BBR、A-Bolt、X-Boltのボルトアクションライフルは日本のミロク社 http://www.miroku-jp.com/gun/browning/index.htmlが生産を担当しています。
 サベージ対抗モデルの廉価版らしいAB3だけが$500代からで他のモデルは米国内新品市販価格$750〜。
 http://www.browning.com/products/firearms/rifles.html
 7ラグの直動式ボルトアクションMaral(マラル)はhttp://www.browningmaral.eu/http://www.browningmaral.eu/en/index.html $2500〜のようです。
        
 ウィンチェスターも「復活」しています。現在ではFN Herstalエフエヌ ハースタル社の傘下にあり、ブローニング社と同じ企業グループです。
 M70Post-'64も改良され品質も良くはなっていたようですが過去の名声を取り戻すことはできませんでした。
       
 近年コンピュータ制御によって金属を切削するCNC旋盤という工作機が普及し、手間のかかる高度な加工がより高精度なうえ低いコストで可能になりM70Pre-'64の生産が「M70Classic」として再開されます。
 現在のM70は基本的にPre-'64タイプのようです。過去のPre-'64より現行生産品の方が加工も精度も優れているとする人もいるようです。
 親会社のFNH社のスナイパーライフル FN SPR(Special Police Rifles) とTSR (Tactical Sport Rifle) http://www.fnhusa.com/l/products/rifles/はM70だったりします。
        
 現在のウィンェスター社はブローニング社と同じく自社の生産ラインを持ちません。M70はアメリカ国内で作られますがそれ以外のレバーアクション銃などの多くは日本のミロク社で作られています。今のウィンチェスター社はいわば過去の名銃を再生産する商標管理会社ともいえるかもしれません。
 アメリカ国内ではM70が$750位〜で売られているようです。
 http://www.winchesterguns.com/products/catalog/category.asp?family=001C
【追記】2015年、ウィンチェスター社は新製品XPRを発表しました。3ラグファットボルト、小型内爪エキストラクター、プランジャーエジェクター。廉価モデルで$500代から。http://www.winchesterguns.com/products/catalog/category.asp?family=029C         
 アメリカのボルトアクションライフルの大手や準大手といえるのはこの辺りでしょう。「中堅」のマスプロ生産者も多くあります。ちゃんと把握しているわけではないので簡単に。
     
 Thompson/Center トンプソンセンター社はSmith&Wesson スミス&ウェッソン社の系列で3ロッキングラグのセパレートポルトの安価で高精度な(sub-MOA保証)Venture ベンチャーモデル$450〜と簡単に1丁の銃で部品交換(銃身とボルト)すれば多様な弾丸が利用できるマルチキャリバーライフルDimension ディメンションモデル$600〜があります。     
 https://www.tcarms.com/firearms/bolt-action-rifles
     
Weatherby ウェザビー社の普及版Vanguard バンガードシリーズ(現行品はシリーズ2)もアメリカでは$500位からでsub-MOA保証です。2ラグのワンピースボルトでプランジャーエジェクター小型外爪エキストラクターです。実はこのバンガードシリーズというのは日本の豊和工業のつくるHowa 豊和M1500というモデルのバレルドアクション(銃身と機関部)をアメリカで銃床に組み込んだものだそうです。HowaM1500も自社ブランドでもアメリカでは$500〜で売られhttp://www.howarifles.eu/12.html(米国代理店LegacySports レジェンドスポーツ社 http://www.legacysports.com/catalog/howa/)、知る人ぞ知る高品質バリューライフルです。
 http://www.weatherby.com/products/rifles/vanguard.html
        
 Marlin マーリン社のModel XL7は2ラグでボルトヘッドは別部品かも、ウィンチェスターM70Post-'64に似た設計。トリガーはサベージAccuTrigger風http://www.marlinfirearms.com/firearms/centerfireboltaction/xl7.asp $400位〜。
 Mossberg モスバーグ社のATRも2ラグでボルトヘッドは別部品かも、ウィンチェスターM70Post-'64に似た設計。トリガーもサベージAccuTrigger風http://www.mossberg.com/products/rifles/centerfire/mossberg-atr $450〜。
 モスバーグ社では過去に豊和ライフルをOEMで販売していたようです。この二つの機関部はよく似ているので、もしかすれば同一のモデルかもしれません。
 マーリン社は基本的にはレバーアクション、モスバーグ社はポンプアクションなどの散弾銃のメーカーであるのでこういった手法は特に問題が有るとはいえないでしょう。
   
 ヨーロッパ等から輸入されるボルトアクションライフルも有ります。
    
 Tikka ティッカはフィンランドのメーカーで現在は元々ライバルであったSako社に吸収されそのブランドの一つとしてベレッタグループの傘下にあります。
 現在のモデルは Tikka T3。一体型のボルトで2ラグですが閉鎖角が75度70度*2(通常の2ラグは90度)という工夫されたメカニズムで製法はSakoから比べれば簡略化された量産モデルですがSako譲りの高品質で知られます。アメリカの小売りが$600〜。http://www.tikka.fi/
         
 チェコは高品質な銃器生産の歴史が有ります。Ceska Zbrojovka(チェスカー・ズブロヨフカ)ことCZ社のCz 550シリーズは基本的にはモーゼルアクションそのものですが現代高級スポーツライフルの標準である3ポイントセフティに改良され高性能なトリガーシステムが導入されています。高い信頼性で知られます。$800〜。http://cz-usa.com/product-category/rifles/
    
 日本では銃の市場が小さいことも有り、アメリカの小売り価格よりも最低5〜6万円、30%以上は価格が高くなります。輸入手続き等のコストもかかる為です。新品の店頭価格は高価になりますがそれでも日本の場合サービスの良い「気心の知れた」ガンショップが有るのは消費者にも好都合です。
 手続きが多く維持管理コストもかかる「高くつく趣味」なため嗜好品的な側面が強く「生活用品」的な部分より愛着を感じる高品質な物も好まれるようです。
「最低限の機能を持つ」量販品は日本の市場ではそれほど人気が有りません。ステイタスの部分も有りブランド志向も強く、アメリカ市場より仕上げを含む品質に対して高い要求がされる傾向が有るといえるのかもしれません。
             
 アメリカでも最低限の機能を持つマスプロ量産品より高品質な市場も有ります。量産メーカーの高級モデルや普及品を消費者が銃工ガンスミスに頼んでチューンナップする市場も有力ですが最初から高品質モデルを中心に販売する「セミカスタム」といえる精度も高い高級ボルトアクションライフルメーカーも存在します。日本でもこのクラスの商品は人気が有ります。
     
 Weatherby ウェザビー社はマグナムライフルメーカーとして知られます。MarkV マークファイブは1958年から作られる古典的な高級銃ですが小型のロッキングラグを2列3個又は3列3個ずつ並べるデザインで「マグナム弾用」として名を馳せました。閉鎖角が54度という連射に向いているとされるデザインでもあります。小型外爪エキストラクター、プランジャ―エジェクター。
 高品質な銃で現在でも根強い人気が有ります。アメリカでは$1500からでありますが中心的な価格帯は$2500〜になります。
 http://www.weatherby.com/products/rifles/mark-v.html
       
 ハンドガンの1911(ガバメント)のカスタムで有名なKimber キンバー社のModel 84シリーズはウィンチェスターM70Pre-'64のクローンです。高品質高精度です。$1000〜。http://www.kimberamerica.com/rifles
         
 フィンランドのSako サコー社は日本でも人気のある高級ライフルメーカーです。
 現在のSako 85は75モデルの発展版で120度に配置された3つのロッキングラグを持つ一体型ボルトを持ちます。ボルトの閉鎖角が60度で素早い操作が出来、スコープが邪魔になりません。現代のボルトアクションライフルの多くがコックオンオープニングというボルトを起こす際にストライカーがコッキングされる機構を持ちますが3ラグはハンドルを起こす角度が浅い為、重い操作になることも多いのですがSako85は大変スムーズな操作が可能にされています。サコー社の小型外爪エキストラクターは高品質で知られM700系等他のライフルに移植されるカスタムも行われます。メカニカルエジェクター。
 旧75の弱点とされたトリガーも改善されました。アメリカ小売りで$1500〜ですが中心価格帯は$2000前後〜。http://www.sako.fi/rifles/sako-85
 廉価版の3ラグ・プランジャーエジェクターのサコーA7もあり$1100〜 http://www.sako.fi/rifles/sako-a7
 
 欧州オーストリアの名門Steyr シュタイアー(ステアー)社のMannlicher マンリカ(マンリッヒャー、マンリッヘル)ライフルは大変優美なデザインで知られます。普及版のリアロッキング(後部にロッキングラグのある)のスナイパーモデルでもあるSteyrSSG69も有りますが高級品のMannlicherラインはブランド力の高いアイテムです。
 いくつかモデルは有りますが現在のメインのClassicモデルはツーピースのボルトで小型のロッキングラグが2列3個ずつ180度に配置されます。小型の外爪エキストラクター、プランジャータイプのエジェクター。シュタイアーSSG69は$700〜、プロシリーズ$800〜、マンリカClassic系は$1500〜。3列x2ラグのマルチキャリバー・モジュラーライフルLuxusも同じクラス。
 http://steyrarms.com/firearms/hunting-rifles.html
      
 ドイツのSauer サワー(ザウエル)社(J.P. Sauer&Sohn)も名門とされます。S101、S202(ハイエンドモデル)がありセパレーツ型のファットボルトで小型のロッキングラグが120度2列3個ずつ付く等、現代的なデザイン。同社のライフルはアメリカでは過去にColt社が輸入していてColt Sauerブランドで売られていたことでも知られます。廉価版のS101で$1500〜、S202は$3000位〜。http://www.sauer.de/en/category/bolt-action-rifles.html 
      
 ドイツのBlaser ブレイザー社のR8とR93は独自の放射状ロッキングラグのストレートプル(直動式)ボルトアクションの簡単なボルト&銃身交換可能なマルチキャリバーライフルです。ボルトハンドルを回転させず真後ろに持ち上げる形でそのまま引くだけで閉鎖を解き排莢、ハンドルを前に戻すだけで装填します。充分な安全性を持ち驚くべき連射性と精度。ボルト前面は標準的な小型外爪エキストラクターとプランジャー型エジェクターです$2500〜。ブレイザーとサワーはSig Sauerグループの企業です。
 http://www.blaser-usa.com/index.php?id=102&L=1
    
 以下、日本では珍しい物も含め個性的なデザインも多い欧州高級銃を幾つか。バイアスロン系競技が盛んなせいか速射性の高い銃が多い気がします。
           
 同じくドイツの競技銃メーカーAnschutz アンシュッツ社の1770と1780 http://jga.anschuetz-sport.com/index.php5?menu=98&sprache=1も2列x3ラグ。$2000〜。

 Mauser モーゼル社は古典的な「モーゼルアクション」以外に2列x3ラグの現代ライフルM12とM03(マルチキャリバー・スイッチバレル&ボルトヘッド) http://www.mauser.com/en/products/も販売。$1800〜。
 モーゼルは現在は事実上ブレイザー社と同一住所の同じ会社です。
   
 続いてドイツのMerkel メルケル社のKR1は個性的なカバー外装型ボルト?の2列×3ラグ*3のターンボルト$3000〜 http://www.merkel-die-jagd.de/en/produkte/gewehre/repetierbuechse-kr1。新型のメルケルRX HELIXはブレイザーとは異なる回転型ボルトヘッドの2列×3ラグストレートプルのテイクダウン式マルチキャリバー・ボルトアクション$4000〜 http://www.merkel-usa.com/news/item/article/rxhelix/?tx_ttnews%5BbackPid%5D=195&cHash=132b316817f30d30f4dd397a985aacfe。 
    
 フィンランドのAlanRhone(アランローヌ?)社のLynx http://www.alanrhone.com/products-lynx-hunter.htmlは梃子で(錠前のデッドボルト状の)ブロック型サイドロッキングラグをスライドさせ閉鎖するシンプルなリアロッキングのストレートプルボルトアクションですが$3500以上はするようです。
 
 ドイツ英国(訂正)のHeym ハイム社のSR21 http://www.heymusa.com/heym_bolt_action_sr21.htmは3ラグのファットボルト、高品質現代ライフル$2000〜。6つのボール状のラグで閉鎖するストレートプルのハイムSR30は$3000〜 http://www.heymusa.com/heym_bolt_action_sr30.htm
 
 余談になりますが自動銃ハンティングライフルは軍用の払下げ品やそのレプリカのM1 Garand ガーランドとM14(M1A)やM1 Carbine カービンの他、現在ではM16/M4系の物も多くありますが狩猟用の銃で高品質な物としてはBrowning BARという軽機関銃M1918(Browning Automatic Rifle )と同じ名前で呼ばれる全く異なるライフルが存在します。自動銃としては精度も高く最高の信頼性を誇りマグナムカートリッジの利用が可能な自動銃としても知られます http://www.browning.com/products/firearms/rifles/bar.html $1000〜*4。軽快なRemingtonModel750 http://www.remington.com/product-families/firearms/centerfire-families/autoloading-model-750.aspx $750〜。
 ブローニングBARの牙城に近年挑戦しているのがイタリアBenelli べネリ社(ベレッタグループ)のA.R.G.O アルゴシリーズのR1です http://www.benelliusa.com/rifles $1000〜。大変格好いい。
 AK系のValmet バルメM88 Hunter http://www.valmetweapons.com/Valmet_Rifles.htmlやM14系ルガーMINI14 http://ruger.com/products/mini14/overview.html $800〜。
  
 現代スナイパーライフルはスポーツハンティングライフルからの流用も多くありますがオリジナルでもレミントンM700タイプ、ファットボルト3ラグタイプ、サベージタイプが比較的多くみられ、他にマルチロッキングラグタイプなどの独自モデルも存在しますがアンチマテリアルの大口径ライフルでも問題無く使われているアクションも多いのが事実です。

 より高級なアメリカのカスタムライフル*5としてはNosler ノスラー社http://www.nosler.com/m48-custom-rifle/ $3700〜、H-S Precision エイチエス プレシジョン社 https://www.hsprecision.com/shop2/ $3000〜、Surgeon サージャン(サージェン)社 http://www.surgeonrifles.com/rifles $4300〜、1911やM16/M4系でも知られるChristensen クリステンセン社 http://www.christensenarms.com/product-category/guns/bolt-rifles/ $3500〜、Mcmillan マクミランhttp://www.mcmillanfirearms.com/mcmillan-rifles/custom-hunting-rifles/、G.A. Precision ジーエープレシジョン社 http://www.gaprecision.net/ga-precision-2014-custom-rifles.html $3200〜といったレミントンM700のクローン、Dakota ダコタ社http://www.dakotaarms.com/ と現在その傘下にあるNesika ネシカ社のM70Pre-'64クローン*6$3500〜 http://www.nesikafirearms.com/、Stolle action(ストールアクション)と精密射撃用のパンダシリーズでも有名なKelbly ケルブリー社 http://www.kelbly.com/rifles-hunting.htmlが$3000〜、現在Coltと提携しているCooper クーパー社 http://www.cooperfirearms.com/ $2500〜、 Lazzeroni(レッツェローニかな?)社 http://www.lazzeroni.com/ct_rifles.htm $4500〜、Gunwerks ガンワークス社 http://www.gunwerks.com/ $4500〜、、CCR カロライナ カスタム ライフル社 http://www.ccrifles.com/ $4000〜、Borden ボーデン社 http://www.bordenrifles.com/、BAT社 http://www.batmachine.com/、Stiller(SPF) スティラー(シュティラー)社 http://www.viperactions.com/、PIERCE Engineering ピアス エンジニアリング社 $3000〜 http://www.pierceengineeringltd.com/、Bergara USA ベルガラ社 http://www.bergarausa.com/Bergara_Custom_Rifles.php $3500〜、Jarrett ジャレット社 http://www.jarrettrifles.com/、HillCountry ヒルカントリー社 http://hillcountryrifles.com/hcr/hunting は$2000〜だが中心は$4000〜、McWhorter マクウォーター社 http://www.mcwhorterrifles.com/、Fierce フィアス社 http://www.fiercearms.com/ $2825〜、Redhawk レッドホーク社 https://redhawkrifles.com/products/catalog/custom-remington-rifles 等多数あります。*7
     
 カスタムトリガーはJewellTrigger ジュエル社がトップブランド、Timney チムニー社 http://www.timneytriggers.com/やJard ジャード http://www.jardinc.com/、Basix ベーシック http://www.riflebasix.com/、ケルブリー、シーレンも。。バレルはShilen シーレン社 http://www.shilen.com/index.html 、Hart ハート社 http://www.hartbarrels.com/index.php、Walther ワルサ―社 http://www.lothar-walther.com/、ベルガラが良いとか。ストック・銃床はMcmillan マクミランhttps://www.mcmillanusa.com/、Hogur ホーグ社 http://www.getgrip.com/main/overview/overmolded.html、H-Sプレシジョン社等。 
    
 勿論世界にはこれ以外の生産者も多く存在します。そしてボルトアクションライフルは古い銃でも中古品として流通します。銃身や銃床を変えてアクション(機関部)だけを再利用し長く使われる銃も少なくは有りません。日本の38式歩兵銃ベースのスポーツライフルもそれほど珍しくはないそうです。道具として長い寿命を持ち、新旧入り混じって使われるボルトアクションハンティングライフルの世界は奥深いです。

*1:参考:小堀ダイスケ 音楽家ときどき猟師http://ameblo.jp/hiradama/entry-11013415285.htmlhttp://ameblo.jp/hiradama/entry-11013424068.html

*2:訂正

*3:14/10/03 一部列×ラグの数字が逆になっていたので修正。

*4:因みにブローニングBARは日本・ミロク製ではなくFNHのベルギーで部品が作られポルトガルで組み立てられたものです。ミロクでは自動銃は作られていないそうです。

*5:この辺りになると0.5MOA位は求められ、ベンチレスト等精密射撃競技用にも使われるクラス。

*6:訂正

*7:イギリス等にあるハンドメイドのダブルライフルを含む超高級銃のジャンルでは$10000から10万ドルを超える物も有る。