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リテラシーと理解について考える

世界のウスターソース類

 日本以外の海外のウスターソース類について調べてみました。

 オリジナルのウースターソース(又はウースターシャ―ソース)はインドのスパイスを基にイギリスで生まれたものとされます。モルトヴィネガーにアンチョビとスパイス、塩・砂糖と香味野菜を入れ熟成させたものです。
       
 英米を中心に欧米では元祖である「リーペリン LEA&PERRINS」がスタンダードで(実はイギリスとアメリカではレシピが異なり味が違うらしい)、その類似品も有ります。アメリカの「ハインツ」ブランドの物もひろく売られているようです(リーペリンも現在ハインツ社傘下)。
 多くは直接かけそれだけで味をつけるというよりも隠し味などに使うスパイスソースの役割です。
 同じようなソースには沖縄でもよく使われる「クラフト」の「A.1ステーキ・ソース」もあります。
 もともとイギリスのブランドらしい(現在ハインツが生産する)「HP」のブラウンソースはお好み焼きソースにも少し似た甘めのソースらしいですhttp://www.heinz.co.uk/en/products/hp-sauce/products/hp-brown-sauce
 デンマークでは「Engelsk(イギリス)Sauce」といわれ「ボ―ヴェ」http://www.beauvais.dk/produkter/saucer-og-dressinger/saucer/beauvais-engelsk-sauce.aspxがあります。
 欧州の他の国でもローカルなウースターソースタイプのソースは幾つもあるようです、ベジタリアンや「自然派食品」のジャンルでも独自のウスターソース類がカタログに載せられているのも見かけました。
    
 日本では明治時代から作られますが「西洋醤油」として日本化され、野菜エキスや発酵成分・アミノ酸を多く含む甘味やうま味をより効かせたタレとして独自の進歩を遂げました。
 濃度のあるとんかつソースや中農ソース、お好み焼きソース等も含め「ウスターソース類」とされます。ブルドックやオタフク、カゴメイカリなどの大手の他、「地ソース」ともいわれる地元中心で売られる中小メーカーのものも多くあります。
    
 現在の韓国では日本風とんかつ(돈까스と書くらしい)も人気のようで、日本製ウスターソース類も手に入り、デミグラス系も有りますが日本型ウスターソース類を作っている現地業者も有ります。(ソースは소스と書く)
 「オットゥギ 오뚜기」のソース類ではそれぞれ、とんかつソース、ステーキソース、ウスターソース胡麻とんかつソースのようです https://www.ottogi.co.kr/otgr/product/ProductList.jsp?page_no=2&proHCode=H00002&proMCode=M00012&proGubun=K&catGubun=K
「ロッテ」の缶詰とんかつソースhttps://www.lottefoods.co.kr/product/product_view.asp?seq=316&c1=B0000&c2=&c3=&ct=&schType=&schWord= や「ベックソル 백설」とんかつソースhttp://itempage3.auction.co.kr/DetailView.aspx?itemno=B235021191、紹介 http://bong988.tistory.com/entry/%EB%8F%88%EA%B9%8C%EC%8A%A4-%EC%86%8C%EC%8A%A4-%EC%B6%94%EC%B2%9C-%EB%B0%B1%EC%84%A4-%EB%8F%88%EC%B9%B4%EC%B8%A0-%ED%8A%B9%EC%A0%9C%EC%86%8C%EC%8A%A4 。他にも「チョンジョンウォン 청정원」 http://www.dongwonmall.com/product/detail.do?productId=000594751 (メーカーサイトはこちら http://www.chungjungone.com/brandstory/product/productList.do)。「ブグァン 부광」http://www.jangboja.com/shop/goods/goods_view.php?&goodsno=9110や、「ヘイン 해인」とんかつソース http://food-n.co.kr/goods/view?no=630、(中国製らしい)「チョンウ 청우」http://www.jangboja.com/shop/goods/goods_view.php?goodsno=7683&category=051012004、「スエプォン 쉐프원」 http://www.jangboja.com/shop/goods/goods_view.php?goodsno=7683&category=051012004も売られているようです。
       
 台湾では「烏酢」又は「烏醋」がウスターソースのことを指すらしいです。「工研 烏酢」http://www.kongyen.com.tw/ShopProd.asp?id=69というのが有り、日本では「台湾産 工研 台湾黒酢(中華風ウスターソース)」で売られています。
 「穀盛股份有限公司」の「醇香烏酢」「素食烏酢」もウスターソース http://www.kokumori.com/product02.htmlです。
 日本のウスターソースの影響でつくられたようです。
   
 ウスターソースは中国では上海で作られ、骨付き肉で作られることが多いとんかつ(炸面托排骨、炸猪排)につけて食べ、「辣醬油(喼汁/ソース)」と呼ばれています。「泰康」というブランドが有名で黄牌(イエローラベル)が特級品、蓝牌(ブルーラベル)が一級品だという事です http://item.yhd.com/item/2076750
 輸出ブランドらしい「《桂林牌》梅林辣醬油」https://tw.buy.yahoo.com/gdsale/%E6%A1%82%E6%9E%97%E7%89%8C-%E6%A2%85%E6%9E%97%E8%BE%A3%E9%86%AC%E6%B2%B9-296%E6%AF%AB%E5%8D%87-%E7%93%B6-1502058.html も有ります。
 香港などの他の地域でも販売され、中国料理の味付けや隠し味にも用いられるようです。
 【文史】辣酱油的本地化变迁史 http://www.shobserver.com/news/detail?id=2748によると1860年代にイギリスから入り、19世紀末から20世紀にかけひろまり、1930年には梅林缶詰食品有限会社(当時)が独自のウスターソースを生産します。日本のとんかつやウスターソースの歴史や文化と重なる部分も有り、何らかの影響も考えられます。
     
 ここに書いただけでなく韓国や台湾・中国にも他にもあるでしょうし他の国にもあるかもしれません。
 ウスターソース類の様なスパイス複合ソース・ドレッシングは世界の多くの国にあり、日本のウスターソース類が特別珍しい文化というものでは有りませんが、日本や中国でアジア化した欧米ソース類は食文化の変容として興味深いものです。トマトケチャップやマヨネーズの受容とも重なります。

 タイでもイギリスのリーペリンも多く、同じタイプと思しいタイ製の「Gy-Nguang」http://www.gy-nguang.com/もありますが、たこ焼きが人気でとんかつも有り日本式のウスターソースซอสวูสเตอร์やとんかつソースซอสทงคัตซึも作られ、こちら「GenYFood」https://www.genyfood.com/products.php?ref=do:read/cid:17/tid:56ではとんかつソースとお好み焼きソースと焼きそばソース、他にも「マルケン(○の中に賢)」など複数の現地生産者があるそうです「チェンマイ発信・飲んべえ親父のチェンマイ子育て物語  http://blog.goo.ne.jp/thaisyo1331/e/4a558f9078255168d6c32464061d244d」。
 日系企業「YAMAMORI」もとんかつソース、お好み焼きソース、タコ焼きソース、ウスターソースを販売しているようですhttp://www.yamamoritrading.com/list_seasoning.html
    
 インドネシアでは英国タイプを「kecapInggris ケチャップイングリス」といい(ケチャップという言葉は元は東南アジアで「ソース・たれ」を意味し、その言葉が欧米に伝わり、トマトケチャップというのはそこからアメリカで普及した調味料)「ABC」http://www.sukamart.com/id/food/cooking-baking/sauces/abc-kecap-inggris-195ml.html、「Asia」http://shopmrben.com/index.php?route=product/product&product_id=4021等、一部入っている日本タイプをウスターソースというらしいです。
 
 ブラジルではウスターソースは「MolhoIngles モーリョイングレス(イギリスのソースという意味)」ですが英国風の他にも日本型ウスターソース類も有ります。
 「Mariza」http://www.marizaalimentos.com.br/produtos/index.php?c=39 こちらのメーカにはなんと「Yakissoba」用のソースもあります、「Cepera」http://www.cepera.com.br/produto/molho-ingles-comum-pet-101-litro/、「Quero」こちらも日本型のウスターソースらしいです http://www.quero.com.br/temperos-condimentos/molho-ingles.htm、「Hammer」http://www.hemmer.com.br/molho-ingles-pet-150ml.html 、「Castrohttp://www.armazemcastelo.com.br/index.php?route=product/product&product_id=31 、「Pirata」http://www.vilma.com.br/produtos/molho-ingles-pirata/ 「Sabara」http://aepaa.pt/~a25794/wordpress/?attachment_id=48、「Qualita」http://www.paodeacucar.com.br/produto/116447/molho-ingles-qualita-150ml、「Dajuda」http://www.ciadagula.com.br/molho-ingles-d´ajuda/等多数の生産者がいます。
  
 南アフリカではマギーの作る「レーゼンビー」のウスターソース http://www.nestle.co.za/brands/food/maggilazenby

 オーストラリアだと「ホルブルックスhttp://www.harrisfarm.com.au/products/holbrook-worcestershire-sauce 、「ライオネル・ブランド」等。
    
 他にはオタフクが海外に進出しています、アメリhttp://www.otajoy.com/、中国の大多福食品(青島)有限公司 http://www.daduofu.com/ 現地化した独自のオタフクソ―ス類もあるようです。オタフクではソースを中国では「醤汁」としています。
 アメリカにはキッコーマンUSAのかつソース http://www.kikkomanusa.com/foodservice/products/products_fs_details.php?pf=20403&fam=204もあります。
 中国にはブルドックソース 富留得客(北京)商贸有限公司 https://www.bulldog.co.jp/cn/も。ブルドックではソースを中国語で「沙司」としています。

 リーペリンソースが世界では多く使われ、分類がどうなのかは知りませんが一説にはイギリスで9割、世界でも4割のシェアを占めているともいわれます。
 しかし日本型ウスターソースもそれなりに受け入れられおそらくその国独自の受容をもされています。日本人には「ちょっと違う」と感じる味になっているものもあるでしょう。
 ですが日本のウスターソースもイギリス型から独自の進化をしたものです、同じようにその国の味に合うように変化するのは面白いと思います。
 そこから何か新しい使い方や料理が生み出されるのかもしれないと考えると楽しみです。  
 お好み焼きはなかなか難しいそうですが串カツや日本型とんかつなどのフライものは世界でも通用するかもしれません、日本型のウスターソース類はまだまだ何らかの可能性を秘めているともいえるでしょう。
        
【参考】
「食の日韓論 八田靖史 三五館」
 http://www.amazon.co.jp/dp/4883206556
 
【関連記事】
>新・とんかつの誕生 
http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20150922/1442901832
   
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http://d.hatena.ne.jp/settu-jp/20151220/1450581163