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リテラシーと理解について考える

「GDPと三八式歩兵銃(ガメ・オベール、大庭亀夫)」より

 先日「ガメ・オベールの日本語練習帳v_大庭亀夫の休日」というブログの「GDPと三八式歩兵銃 https://gamayauber1001.wordpress.com/2015/08/08/arisaka-type-38/」という記事にコメントを入れました。

 摂津国人         
 こんばんはおじゃまします。
     
 「欠点は口径が小さすぎて殺傷能力が低く、アメリカ側から書かれた戦記を読んでいると、なんとはなしに45口径や38口径が入り乱れているなかで、ただひとり22口径で射撃している健気なギャング」と書かれれていますが当時のアメリカの小銃は30口径で日本の三八式の6.5mmは26口径になりそれ程の大きな差ではありません。
   
 それと現在のアメリカ、ロシア、中国、日本の制式小銃の口径は自動式ではありますが何れも22口径です。45や38等の短距離用の拳銃の大口径と中遠距離用の小銃の口径や役割は異なります。とくに「殺傷力」が低いとは言えません。射程距離に劣るところは有っても「突進してくる海兵隊員を一発で倒すことは難しかった」という事は有りません。
 それと太平洋戦争期には7.7mmの九九式普通実包に更新され30口径7.62mmのアメリカの小銃と威力の差は有りません。大戦後期には多くが7.7mmの九九式小銃及び九九式短小銃に更新されており、その上歩兵小隊であっても基本的には軽機関銃や軽迫撃砲も配備されていて「三八式歩兵銃のみを武器にして戦った」というのも事実ではありません。
     
 それと当時の世界では英仏独伊ソを含む世界では一部の部隊などを除く基本の制式小銃はボルトアクションライフルが主流で自動銃はアメリカ位の特殊例です。
 三八式歩兵銃については「三八式歩兵銃と日本陸軍」(ボビージャパンMOOK) が出ましたのでよろしければご参照ください。

(mmが環境依存文字になっていたので修正した)
           
 こちらのコメントは公開されずにこちらの記事にこのような文章が書かれました

https://gamayauber1001.wordpress.com/2015/08/11/panzerfaust/#comment-7004

補遺:

「GDPと三八式歩兵銃」の記事を書きながら、きっと来るよなー、そりゃあ来るに決まってるだろう、と考えていたコメントがやっぱりいくつか来ました。
第二次世界大戦では他の国もボルトアクション式のライフルが主流でアメリカは例外です」というコメントで、「アメリカは例外」という、その「例外」と戦ったのを忘れているようなコメントで面白いが、どこかに、あるいはあちこちに書いた本や雑誌があるのでしょう。いつも決まって同じようなコメントが来る。

今回はなぜか、いつものような失礼な口調は少なくて、表面だけでも丁寧な口調なので、さすがにコメントとして採用する気はしないが、少しだけ説明しておきます。例えば、どの投稿者も問題にしているドイツがなぜ最後までKar98kを使っていたかは 軍隊である以上、当然のコストの問題のほかに、本来「防御兵器」である機関銃を攻勢的に使う、という、ロンメルの「Infanterie Greift An」(Infantry Attacks)以来の不思議な伝統があります。
それを可能にするMG34/MG42という他国軍とは大きく設計思想が異なる機関銃も持っていた。
    
ほんとうは、(特に大日本帝国の各種兵器について)日本の兵器ヲタクのひとびとと話して遊びたいところですが、このブログは、そういうことをする場所ではないので、とりま、とりあえず、戦術思想に拠っていることを示すために、アメリカ人がつくった、有名なドイツ歩兵の戦術をうまく解説した短いビデオをyoutubeから探し出して、リンクを貼っておくことにします。
皮肉な気持ちで言っているのではなくて、これを観て、考えてください。
兵器は個々の兵器だけをみると、おおきく誤解して、全体を間違えてしまいます。
どうか、そのことを忘れないで。
     

        
 なぜか意味の取りにくい賛同?コメント等は公開されていながら、こちらのコメントは「さすがにコメントとして採用する気はしないが」とコメント本文を示さずに「説明」をされています。
 こちらの指摘の本論は三八式歩兵銃や旧日本軍の小銃や武装についてと拳銃・ライフルの口径や威力の違いに対してなのですがその点については書かれず、ドイツの話に限定し、これもあやしげな「ドイツの戦術思想」とやらの話をされています。
      
 ドイツの「MG34/MG42」は日本も含む当時の多くの軍隊が採用していた攻撃(とその支援)にも用いる軽機関銃と、それとは別の大型の「防御兵器」用の重機関銃を統一した汎用機関銃(General Purpose Machine Gun)のことで、第二次大戦期には攻撃(攻勢)用の軽機関銃自体はごく一般的な兵器です。日本でも九六式軽機関銃と九九式軽機関銃が配備されています。
 「設計思想が異なる」のは統一している部分で、その後世界では標準になっています。
      
 元の記事は日本ではときどきみかける「非軍事系」の資料による「間違った軍事・兵器知識」から敷衍して「想像」「推測」で書かれた俗流日本論戦争論のようです。
 「読み物」レベルの資料を裏どりもせずに読み、ご自分の「思想」や「論理」で理解する人に多い間違いです。
      
 これでも納得する人や愛読者もおられるようですが、ネットではこういった根拠のない浅薄な情報が、さも詳しいかのように書かれている事も多いので、(勿論この記事自体も含め)ご自身に知識のない内容を読まれる際は気を付けて読んだ方が良いでしょう。
  (どうして旧日本軍をあまり評価しない摂津国人が結果的に擁護せざるを得ないのか……。幾らでもダメな部分あるでしょ……。)
  
 心配なのは、この文章を読むとこの方が実際に「45口径や38口径」の拳銃や6.5mmや7.62mmのライフルの銃弾に触れたことがあるかわかりませんが、「今度のオークションでArisaka Type 38を買おうとおもっているが、機会があったらブログでも報告します」と実銃を購入できたりする環境にあるように書かれています。
 もしこれが本当で、実際に買われた場合、そのような誤解をされていると大変危険なので気を付けていただきたいと思います。